ゆめちん

復讐者たちのゆめちんのレビュー・感想・評価

復讐者たち(2020年製作の映画)
3.5
復讐者たち
 
"目には目を、600万人には600万人を"
 
1945年、敗戦直後のドイツ。ホロコーストを生き延びたユダヤ人のマックスは、妻子がナチスに殺されたことを知り、復讐を決意し、ナチス残党を密かに処刑している "ユダヤ旅団" に合流する。そこで彼は "ナカム" という超過激派のユダヤ人組織の存在を知る。
 
ホロコーストを題材にした作品は数多く観たけど、ユダヤ人による大規模な復讐劇が計画されていたことは全く知らなかった。

冒頭、"あなたの家族が殺されたら、どうする?" そんなシンプルな問いかけから始まり、物語は凄まじい怒りや暴力の連鎖という要素が深く絡まりながら、どんどんと重みを増していく。それは現代にも相通ずるところがあり、自分が主人公の立場なら一体どうするか、考えながら鑑賞した。

主人公が仲間から妻子の最期の様子を聞き、森に駆け出し土に顔を埋めながら泣き叫ぶ姿が、目に焼き付いて今も離れない。復讐心が湧き上がるのは生身の人間として当り前の感情だと思うが、復讐は復讐しか生まないのもまた事実。最終的に主人公が行き着く、ホロコーストへの復讐方法がとても意味深く思えた。

"鑑定士と顔のない依頼人" で、ミステリアスなヒロインを演じたシルヴィア・フークスが、今作ではナチスに子供を殺され、復讐に燃える過激派ヒロインを見事に演じきる。

ラストに映し出される年老いた生存者たちの表情。彼らは過去の苦しみを乗り越えたのか、未だに怒りを抱えているのか。観る人、一人一人が感じ取ってほしいと思う。
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