猛暑の中、ニューヨークのあるアパートでは人々がお互いの行動を観察し悪口を言い合って暮らしていた。特にローズ（シルヴィア・シドニー）の母は夫とは別の男と頻繁に密会して噂の的になっていた。そんなある日、ローズの家で両親の間に悲劇が起きてしまう。

恋愛モノとしては面白くないけど、この時代のニューヨークを象徴的に描く群像劇としてなかなか興味深かった。
いかにも舞台の映画化って感じの、ほぼアパートの前のワンシチュエーションで展開していくつくりも効果的だ。

それにしても、ご近所さんたちはみんな噂好きで口が悪く、時間を持て余している人ばかりで、見ていてうんざりしてくる。
そして、男はみんな女好きで、女性がやたらガードが緩い。みんな性格が極端で、きっとニューヨークの多様性を濃縮させて見せてるんだろうな。

時代とはいえ、ほぼ全員が “男は働き、女は夫と子供の世話をしてればいい” と信じて疑わず、そこから生まれる不満に、不況下の息苦しさと猛暑が混ざり合うことで、恐ろしい事件が起きてしまう。
そんな汚れた世界から去っていくというラストがなんともシュール！

汚れた街でもシルヴィア・シドニーは輝いてたなー。

事件

貧しい移民たちが暮らすブルックリンの古アパートを舞台にした愛憎と人情を描いたドラマ

道での話
人々の暮らしが伺えます

会話劇

背景がそれぞれバラバラ
ロマンスもあり

見応えあります

ヴィダーは労働階級を扱うと上手い。冒頭の数カットに様々な職種の大人と子供、猫まで登場するがこれは『ビッグ・パレード』と同じ。
ほぼ全てのシーンがアパート前で起こるという舞台劇らしさを留めつつ、限られた人数でフレーム外のドラマを紡いでいく前半と、ある事件が起こってからアパートへ野次馬が詰めかける終盤とが上手く対比されている。

『群衆』でも子供が自動車に轢かれた時に人々が集まってきたが本作との明らかな差は野次馬たちの動機であり、前者が配慮であるのに対して、今作の場合は単純な興味でしかない。世界恐慌下で人々は他人の不幸に良く悪くも敏感になっている。
あと冒頭とラストで歌いながら輪になって遊ぶ子供たちの様子が反復されるが、これは同年公開の『M』を想起せずにおれない。世界恐慌の混乱と、台頭しつつあるナチスに対する不安が国境を超えて共鳴し合う瞬間を見た。