タケオ

トラップ・ガール 美しき獲物のタケオのレビュー・感想・評価

3.6
-衝撃の結末に唖然!! 度を越えた胸糞悪さで鑑賞者にショックを与える怪作 『トラップ・ガール 美しき獲物』(19年)-

 それがポジティブなものであれ、あるいはネガティブなものであれ、観客にショックを与えるような作品にはそれだけで十分に価値がある。グラン・ギニョールからトーチャーポルノ、スラッシャーホラーに至るまで、「見せ物」である以上「残酷」と「娯楽」は同じ延長線上にあるからだ。
 自然写真家の主人公ハーパー(アナベル・デクスター・ジョーンズ)が、バージニア州の渓谷で凄惨な事件の現場を目撃してしまったことをきっかけに、あれよあれよという間に思わぬ事態へと巻き込まれていく姿を描いた本作『トラップ・ガール 美しき獲物』(19年)は、少なくとも物語の中盤までは、ハーパーの女ランボーの如き活躍を堪能できる楽しい作品である(あれ、自然写真家じゃなかったの?とかそういうツッコミはご愛敬)。見所だって少なくはない。弾薬箱そのものを用いたフレッシュなトラップや、『悪の法則』(13年)を彷彿とさせる生首切断描写など、そこそこではあるが視覚的な愉快にも満ちている。あと、なぜかブルース・ダーンが出演していたり。ちなみに主演を務めたアナベル・デクスター・ジョーンズは、『マイヤーウィッツ家の人々』(17年)や『アンダー・ザ・シルバーレイク』(18年)といった作品にもちょい役で出演しているほか、「Marni at H&M」や「LOUISS VUITTON」のキャンペーン・ガールにも抜擢されるような人気モデルであり、正直彼女を眺めているだけでも十分損はない作品だといえるだろう。しかし、だからといって彼女が悪役をバッタバッタとトラップでやっつけていくような痛快作を期待してはいけない。『トラップ・ガール~』が真の本領を発揮するのは怒涛のクライマックスからだからだ。
 ネタバレになるため詳細は伏せるが、「いや、人気モデルがなんでこんな役を引き受けたんだよ!?」と思わず叫びたくなるような衝撃のラストには唖然とさせられた。そのあまりの不条理、残酷、鬼畜っぷりを前には、胸糞映画の金字塔として名高い『セブン』(95年)や『ミスト』(07年)すら痛快作に思えてくるほど。映画自体の完成度はお世辞にも良いとはいえないが、このラストの衝撃だけは認めざるを得ない。たとえば『ソドムの市』(75年)や『ムカデ人間』シリーズ(09~15年)などがそうであったように、強烈かつ悪趣味極まりないアイデアを視覚化し観客にショックを与えた時点で『トラップ・ガール~』は、言葉の真の意味においての「表現の勝利」を果たしたといえるだろう。
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