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ノイズのkuuのレビュー・感想・評価

ノイズ(2022年製作の映画)
3.0
『ノイズ』
映倫区分 G.
製作年 2022年。上映時間 128分。
筒井哲也の同名コミックを、『デスノート』シリーズで共演した藤原竜也と松山ケンイチの主演で実写映画化したサスペンス。
泉圭太役を藤原、田辺純役を松山がそれぞれ演じる。
神木隆之介のポリスマン役は似合ってたなぁ。
監督は『ヴァイヴレータ』の廣木隆一。
主要な俳優さんたちの演技はとてもよかったが、エキストラレベルと、回想シーンのガキたちの演技は頂けなかったっすね。

時代に取り残され過疎化に苦しむ孤島・猪狩島。島の青年・泉圭太が生産を始めた黒イチジクが高く評価されたことで、島には地方創生推進特別交付金5億円の支給がほぼ決まり、島民たちに希望の兆しが見えていた。
しかし、小御坂睦雄という男の登場によって、島の平和な日常が一変する。
小御坂の不審な言動に違和感を覚えた圭太と幼なじみの猟師・田辺純、新米警察官の守屋真一郎の3人は小御坂を追い詰めていくが、圭太の娘の失踪を機に誤って小御坂を殺してしまう。
3人はこの殺人を隠すことを決意するが、実は小御坂は元受刑者のサイコキラーであり、小御坂の足取りを追って警察がやってきたことで、静かな島は騒然とする。

今作品は筒井哲也(生田斗真主演の映画化作品『予告犯』の原作者)の同名漫画の映画化で人里離れた小さな村社会で暮らす人々の親密な関係を利用し、また、その逆にそないな環境から生じる欠点を前面に出した事件を提示してる、興味深い犯罪映画でした。
興味深いとは云え、善き映画とは個人的には云い難いかな。
プロットホールが多すぎるし、コメディタッチを織り混ぜることで、冒頭等はこれからあんなこと、こんなことが起こる前の和やかさを演出してるのは悪くはなかったが、何度となく見せるプチ笑いシーンは要らないし、個人的にはどうも距離をおいてもた。
とは云え、興味深い点はたしかに、高齢化問題や、嫉妬、消えへん恨みつらみ、ゴシップに政治家の目的意識などなど、そのまま描き、全体の文脈に大きな影響を与えてるのは評価したい。 
それに善き俳優陣を擁してるのだし、原作の(原作を読んでませんのでどれくらい近づけてるのか不明ですが)足枷を取ってもう少し自由さがあったならメチャクチャオモロい作品になった可能性を秘めてるんじゃないかな。
加えて、これらの要素が、罪と罰というプリズムを通し、人間の本質についての一連の哲学的な見解の源として機能しているのやし、これらの見解は、主な事件をより複雑にする形で実行されてて、それと同時に、この物語の主な源泉として、ラスト近くでむしろ明白になる悲劇的な皮肉の感覚を含んでいる。
今作品で最も印象的なのは、なんちゅうてもキャスト。
特に男性俳優たちで、圭太役の藤原竜也は、ほとんど常に心理的抵抗ともとれる行動をしそうになりながらもクールな役を演じてました。
田辺純役の松山ケンイチは、圭太の親友でぶっきらぼう温かい優しい人柄の中に何か秘めてるのを巧みに演じてました。
守屋真一郎役の神木隆之介は警察官と云う職業と村の純朴な曖昧さのジレンマに揺れる役をこれまた巧みに演じてました。
この幼なじみの三人を兄弟に例えると、
藤原竜也が演じる圭太が長男のようで(勝手な考えですが)特権を享受してる。
松山ケンイチが演じる田辺純は、圭太の特権を端で見て耐える次男坊的な役柄。
神木隆之介演じる守屋真一郎は甘えが見える末っ子的と云えるかな。
それにしてもこの三人の俳優さんは好きにならずにいられない。
黒木華演じる泉加奈は圭太の前に進む原動力となっており重要な役割を静かに演じてました。
また、永瀬正敏が演じるノワール風のデカ・畠山努は(こないな役には合ってるなぁ)、常に冷静であるが故、その冷静さを失う瞬間に、結構、衝撃を受けたかな。
でも、そのキレるノワールデカ故に、リアリティーは感じないポリスだった。
礼状もなく人の家に入り込み鍵を壊すポリスなんてあり得ない。
ポリスが器物損壊事件起こしてどないして正義が成り立つねん。
関連として、証拠のモノに触れそうになった圭太に、伊藤歩演じる愛知県警の刑事・青木千尋が制止をする際に拳銃を抜き圭太に向けた。
あり得んやろ。
とは云え永瀬正敏の今作品の役柄はドラマとしてはよかった。
また、寺島進や柄本明が脇を固めてて、キャストの質の高さが際立ってました。
女優陣では、庄司華江役の余貴美子がオモロかった。
彼女の芝居がかったモノローグは映画全体の中でも善き瞬間の一つでした。
廣木隆一監督は、極端なロングショットを何度も使って島の美しさとかのどかさを強調して、物語の中で起こっていることへの興味深いアンチテーゼを作り出してました。
編集の結果、比較的ゆったりとしたテンポになり、このような舞台の生活様式にマッチしてるんじゃないかな。
廣木監督は、この問題を鈍らせるために、ほぼフィナーレにもうひとつのひねりを加えているが、映画全体が発する感覚を壊すほどではないにせよ、『ダメージ』はあらかじめ与えられている。
謎を解きあかすちゅうエンタメ面でも観ると、示唆がちょっと見てくれよと云わんばかりに感じるのは否めないが、全体的には楽しめる映画になっていました。
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