サラリーマン岡崎

英雄の証明のサラリーマン岡崎のレビュー・感想・評価

英雄の証明(2021年製作の映画)
4.7
アスガー・ファルハディの作品はいつもイスラム社会の文化の驚きをくれる。
今回も文化の驚きの連続。
まず、借金をして返せないと刑務所に入れられて、
収監されている時にも休暇があって、実家にも帰れる。
そして、お金を拾って届けただけなのに、めちゃめちゃ英雄扱いをされて、
TVの取材だとか、寄付金が支給されたりしちゃう。

そこでもSNSの闇がはびこる。
でも、日本よりもそもそもイランはSNSの様な国なんだなと感じた。
上記の通り、ちょっとした好意でも大きく評価されてしまう社会であるし、
それを大々的にTVに取り上げたり、イベントを開いて、社会の見本として示したりする。
主人公の息子は吃音を抱えていて、寄付金の団体のイベントでも息子がたどたどしく父への思いを話すのもより共感をそそう。
そして、SNSによって主人公の立場が悪くなった際にも、主人公の上司がその息子が父への思いを語る動画を取ることで民衆の共感を得ようとする。
まさに、アピールのために、様々な人を利用したりしている。
寄付金団体もとても良い活動をしていると思わせておきながら、
主人公や息子を団体のアピールとして利用している。

だからこそ、主人公の行為が嘘だというデマが回り始めると、
主人公に一ミリも寄り添わず、彼を責め続ける。
全く事実を受け止めずに、責め続けるのだ。

でも、これは最近、日本で生きる自分も報道という観点でよく感じる。
メディアが一面的に報じる中で、それが本当に正しいのかを判断する力が今世界では求められていると思う。
フェイクニュースも飛び回るし、情報がたくさんある中で、どう自分が判断するのかが重要だなと感じる。

彼の行為が全て嘘ではないことを知っている観客は、きっと「ちゃんと彼を見て!」と思うはず。
そう思って欲しい人は世の中にたくさんいると思う。