Anima48

リバー・ランズ・スルー・イットのAnima48のレビュー・感想・評価

4.0
ブラッドピットが本当に素敵に撮れてる、川の流れの中で、陽の光を浴びてこちらを振り返るピットは本当に綺麗だった。かなり前の映画だから却って瑞々しさやピュアさとか人生のほんのひと時に濃縮された素晴らしい光景の儚さが沁みる。

あとは素晴らしい川、それにフライフィッシング。兄弟揃ってフライの飛ばし方のフォームを幼い日にしっかり教わったので、人生で多少の事があっても川で竿を振るえばルーティーンのように素の自分に戻れるし、兄弟にも見せることができる。そんな心が帰れる場所をもつことはホントに素敵じゃないかな。兄弟は人生で何かが起きた時、何かが変わる節目の時、必ず釣りに誘う。そうすればあの4拍子のリズム、川の音が本来の自分、兄弟の普遍的な心の在処に触れる事ができる。それは心が迷いを抱いた時に還ることができる家のようなものかもしれない。

兄弟は釣り以外にも文章に親しむという似通った所があり、兄は英文学の教授、弟は新聞記者の道に進む。やはり同じ分野でも静かに思索に耽りそして導く教授に進む兄、取材で走り回り短いスパンスで活字にする記者になる弟とスタンスは対象的。そんな弟を釣りの寵児として眩しい想いで見つめる。その美しさを実感しつつそれが輝きを無くしていく無常の予感に諦観も覚える。

父は語る,”愛する者の助けになる事は困難でこちらの差し伸べた手をすり抜けていく、出来る事は愛する事だけ。理解しようとせず、あるがままを愛しなさい。”愛する人を喪ったりお互いの道を違えたりすることは、悲しいけれど生きていく上でどんなに手を尽くしても避けられない。それを通り抜けて得る境地なのかもしれない。弟の才能や佇まいは兄の記憶に焼き付き永遠になったのかもしれない。老境の今そういった事もいろんな想いに溶け合ってしまったけれど。

川流れは水量、温度、石の様子や波立つ水面など一瞬として同じ事はなくって、だから釣り人の工夫のしがいはあるんだけど、大まかに言えば変わらず流れている。そういった大らかな流れを感じる事ができた。

そんな光景に憧れて、アメリカで釣りをしたことがあって、日本の川にはあまり無いゆったりとして幅広い流れだった。

釣りに夢中になると、もう糸が見えなくなって、結べなくなる暗さまで釣り続けてしまう。そんな時の川は、あの台詞の光景の通りになる。

僕は、何歳まで釣り続けることができるんだろう?僕の思い出の中にも川が流れてくれてるといいけれど。
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