とりん

ブレードランナー ファイナル・カットのとりんのレビュー・感想・評価

4.0
巨匠リドリー・スコット監督によるSFの金字塔。SF好きと言っておきながら、恥ずかしながら初めての鑑賞。

今でこそ大量のSF映画が量産されているが、80年代初頭ってスタートレックやスターウォーズ、2001年宇宙の旅といった走りの映画があったくらいでまだまだ開拓的なジャンルだったはずだ。
しかもどれもが宇宙を舞台としており、時に派手な戦いをしたり、ワクワクさせるような冒険をしたりするものだ。
しかしこの映画はどちらとも違う、派手な戦闘シーンも特になく、宇宙に行くことすらない。
近未来を描き、遺伝子開発により作り上げてしまったレプリカントと呼ばれは人造人間とのやりとりを描いている。
そこにはそれまでのSFとは全く違うとも言えたドラマ、スリラー、サスペンスといった濃い内容が練りこまれている。
同ジャンルは今でこそ確立されているようなものだが、間違いなくこの映画が先駆者とも言えると思う。

この時代でさすがともいえるとてつもない映像技術を駆使し、映像としても申し分ない。ただ全体的に暗い。
ストーリーとしても明らかに万人ウケするような内容でもないし、わかりにくい部分がかなり大きい。きっと大半の人は途中で寝てしまうんじゃないかとさえ思う。

いくら人造人間といえど、人が人を作ってはいけない、人は神ではない。レプリカントを奴隷同然のように扱い、地球外での開拓をしむけ、当たり前のように4年という寿命が過ぎれば使い捨てる。
感情を持ったレプリカントは作られたというだけであり、普通の人間となんら変わりはないのだ。
地球にやってきたレプリカントを排除するブレードランナー、デッカード。彼はかなりの腕前でレプリカントを次々に仕留めていくが、リーダー格のレプリカントに追い詰められていく。
死が迫っている恐怖、普段彼や人間がレプリカントに対して行っていることを自ら身をもって体験する。

レプリカントは地球を侵略に来たわけではない、人を殺しに来たわけでもない、普通の人間のようにただただ生きたいだけなのである。人間が踏み込んではいけない過ちを30年以上も前にこの映画は語っているのだ。
という自分もこの映画を半分すら理解できていないはずだ。何回も観てようやくわかる部分も多いだろう。きっとこれから何度も観る映画だと思う。

レプリカントの死ぬシーンはあまりにも狂気的で、ホントに人が死ぬような断末魔のような生きたいという願望か、リアルで恐怖を感じた。
とりん

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