鑑賞タイミングを逃し続けてきての漸くの鑑賞。
公開前は原作およびTVアニメシリーズの熱烈なファンからの賛否両論が話題を呼んでいたが、公開後は絶賛の嵐であり、一応原作は既読済の身としては観ておこうと思い立ったという程度のミーハーなのだけど。
結果的にものすごく素晴らしかった。
スラムダンクのファンかどうかは完成無く、日本アニメーション映画の最先端である本作は映画好き・アニメ好きにとって必見の一本である。
原作コミックは漫画という二次元領域において、バスケットボールという高次元な三次元的表現を極限まで高めることに成功した希有な作品であることは周知の事実だけど、その原作を3DCGという三次元の世界で忠実に描き出すことで、原作が持つ緻密な表現を最大限に引き出している。
その手法は『スパイダーマン スパイダーバース』と類似しており、世界の度肝を抜いたあの大傑作に対する日本からの回答とも言えるだろう。そしてその素晴らしさは甲乙つけ難いほどなのだ。
バスケットボールは他のスポーツと比べるとその性質上、アニメーションとして描くには非常に難しいと思うのだけど、本作の躍動感はリアリティとダイナミズムに溢れており、バスケットボールという競技の迫力を突き詰めている。
アニメーションだからこそ可能な、実写では到底実現し得ないアングルワークも試合の緊張感を高める一助となっており、今作はそういう意味でもアニメーション映画としての価値を有していると思うのだ。
原作の中でも特に人気で物語を象徴する試合を抽出して映画独自のオリジナルストーリーを挿入して作られた本作は、ややもすれば伝説的な作品の二次創作になりかねない危険も孕んでいるが、井上雄彦本人が脚本・監督を仕切ることでそんな事態を招くこともなく、完全なる「スラムダンク正史」として成立している。
まあ原作があまりに完璧がゆえに、今回語られた新エピソードを冗長と捉える向きもあるかもしれないけれど。
そこはファンそれぞれの想いによるところだろう。
個人的にはとても説得力のある素晴らしいエピソードとして好意的に受け取っている。
もちろん原作の名シーンも抜かりなく描いている。ただ巧妙だったのはそうした人気の名シーンを誇張せずにある種淡々とストーリーの中で消化していくことで、物語全体のスピード感を担保していたことだ。
普通なら過剰なまでにドラマティックに演出したいシーンの連続なのに、あえてクールに見せ場を転換していくのが堪らなくカッコいいのだ。
スラムダンクという漫画は敵味方、メインサブ関わらず多くの魅力的なキャラクターが登場するのだけど、この映画でも湘北のスタメンはもちろんのこと、それ以外のキャラクターにも目配せしていることが嬉しかった。
本作がTHE FIRSTと銘打たれていることに様々な憶測が飛び交っているが、ぼくは言葉そのままに受け取ってTHE SECONDの公開を期待しています。