カエル王ちゃん

THE FIRST SLAM DUNKのカエル王ちゃんのネタバレレビュー・内容・結末

THE FIRST SLAM DUNK(2022年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

アニメ版を観たのがたぶん小学生の頃で、記憶が遠すぎて山王戦をアニメでやってなかったことを今更知りました。コミック版はすべて読み終えていたので、山王戦の展開自体はだいたいわかるという、記憶あいまいな状態で映画を観ました。

これまで映像として描かれなかった山王戦と宮城リョータのストーリーが物語の両輪となって展開して行き、エンディングに向かうという構成は、半分想定内で、半分予想外でした。

物語の片輪である山王戦はダイナミックで、現代の技術でもって改めて描かれるのは、ここまで待った甲斐があるというものでしょう。特に高校バスケとは思えないほどの空中戦の応酬は、凄すぎて滑稽に見えなくもないのですが、湘北がここまで上がってこれたのは、この身体能力の高さによるものかと思えば、あのダイナミックな試合展開こそ湘北好みのゲームだったといえるでしょう。また、コミック版ではどうしてもその瞬間の躍動感が表現できなかったと思っていた花道と流川のハイファイブは、この映画版を以てようやく十全に表現されたのだと感じました。

山王戦はダイナミックな展開の中、序盤劣勢に陥った湘北が終盤猛追するというバスケの醍醐味を勢いよく描くものでしたが、個人的には、その合間にインサートされる宮城リョータを始めとする過去のストーリーがその勢いを邪魔してるように感じられました。特に、湘北が反撃の狼煙を上げた後でもちょくちょくフラッシュバックが入るのは、「今いいところなんだけど?」ていう思いを持ちました。

そして最大の疑問点は、何故物語の片輪が宮城リョータのストーリーでなくてはならなかったのか?です。

この点は、最後まで観てもいまいち納得できませんでしたが、おそらく、サイズのハンデや、幼少期から兄との比較に苦しみ、成長しても周りとうまく馴染めず先輩連中に絡まれるといった宮城リョータの陰の側面にアンダードッグメンタリティの原点があるということを示したかったのかと解釈しました。あの鼻っ柱の強い性格もそれらを経て形成されたものということを跡付けるストーリーなんだろうと思いました。しかしながら、あのストーリー自体の意味は分かっても、じゃあ、なんでそのストーリーに沿って物語が展開しなきゃいけないんだろう?というのは、一回目の鑑賞においては見えてきませんでした。

山王戦に至るまでの、もとい湘北の5人が集うまでのストーリーを見せたかったのだとしたら、すでに本編で描かれている花道以外のストーリーも一人一人じっくり見せてくれたら、この構成の意味ももっと理解しやすかったと思います。

往年のファンも新規のファンも、感動した人が多々見られるのですが、個人的には釈然としない部分があったので、感動するまでには至りませんでした。とはいえ、映像化という点で未完の大作であったスラムダンクにようやくピリオドが打たれたのはよかったと思います。