カエル王ちゃん

シン・ウルトラマンのカエル王ちゃんのネタバレレビュー・内容・結末

シン・ウルトラマン(2022年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

「希望は残っているよ。どんな時にもね」というエヴァにおけるカヲル君の台詞を思いながら、シンゴジラやシンウルトラマンで描かれているのもやはり希望だと感じました。

しかし、シンゴジラで希望を見出したのは政治の力でした。特に得体の知れない巨大生物に巨災対という政府の一組織の奮闘を軸に人間の力を結集して戦ったわけですが、今回の政治面は、外星人にいいように翻弄され、最後はゼットンによる地球の危機も世間には伏せてしまおうという、むしろ政治の悪い面が強調されており、それが別の希望を存在を引き立たせていました。その希望の源は科学の力であったと思います。

映画の中盤以降は暴れ回る禍威獣から高度な知能と科学技術を持った外星人が来襲し、最後はゾーフィが持ち込んだゼットンという巨大な兵器が相手になりました。この間、理系ヲタク滝の反応が印象的でしたが、人類にとっての頼るべき科学の力が宇宙から見たら取るに足らないレベルなのかと思い知らされ、無力感に苛まれ、もはや神的な存在と化したウルトラマンに地球存続の希望を丸投げしようとしました。しかし、ゼットンはウルトラマンすら敵わない相手で、ゼットンとウルトラマンが宇宙で対峙した時のサイズのギャップはすごかったですね。ですが、神永が与えたヒントを足掛かりに最後はウルトラマンと人類の科学が力を合わせてゼットンを別の次元に吹っ飛ばし、地球は窮地を脱することができました。

ザラブやメフィラス、そしてゾーフィの非情な決断などをみて感じたのは、外星人は高度な科学技術を持ち、非常に合理的で徹底した弱肉強食の原則に沿って目的達成を目指す連中だと思いました。それゆえに未発達な科学力しかなく、相対的に弱い存在である人間は、彼らに利用されるか支配されるかしかない辛い立場にあると痛感しました。しかし、ウルトラマンが神永と融合し、人間をよく観察してくれたおかげで、未発達な科学力であるがゆえに持つ潜在的な可能性に興味を持ち、身を挺して弱き者のために命を投げ出す神永の非合理的な行動にウルトラマンが感化され、他の外星人と違って人間に味方してくれたのだと思います。いわば割り切った物の考え方をする方が割り切れない考え方をする人間に魅かれた、という点は興味深かったですね。

折しも、強国がその軍事力によって周辺国に侵攻している昨今でありますが、宇宙の中では外星人に比して弱小の存在の地球という構図は、絶妙に虚構と現実をリンクさせるものだと思いました。しかし、弱いからといって従属させられる謂れはないわけで、遠い将来メフィラスが地球の支配を目論み来襲してきたならこう言ってやりましょう。

「鶏口牛後、私の好きな言葉です」