カエル王ちゃん

否定と肯定のカエル王ちゃんのネタバレレビュー・内容・結末

否定と肯定(2016年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

ユダヤ人歴史学者デボラとホロコースト否定論者アーヴィングの真実を巡る法廷闘争。実話に基づくストーリーは、舞台を2000年としているが、内容はフェイクニュースや歴史修正主義が跋扈する今と妙にマッチする。もしかしたら、歴史というものは普遍的に真偽の対立の舞台なのかも。表現の自由が保障されるからといって、明白な事実を捻じ曲げていいわけではない。「証拠」があるからといって歴史を書き換えていいわけではない。それにもかかわらず主にネット上で繰り広げられる不毛な論争。世の中には無数のアーヴィングがいるようなものと思った。
裁判という白黒がつけられる場では、判事はあのように判決を下し、映画の観客は溜飲を下げることができたが、瑕疵のある論拠や歪んだ解釈から繰り出される真実への攻撃。社会は正義を掲げて歴史を守り続けられるのかは、甚だ疑問。映画の山場では、一瞬判事は原告アーヴィングに傾いたように見える場面がある。結局は原告の差別主義者の側面が判決に影響を及ぼすが、原告が心底その証拠を信じて、差別主義者の側面と関係なくその論を展開していた時、判事ではなく社会が判断しなければならない時、どうなるのかと。
とはいえ、他人に良心を委ねたことはないと言うデボラが被告団のチームを信じて、紆余曲折がありながら正義を証拠する過程にはハラハラドキドキがあって、ルーティンのジョギングがウイニングランとなる流れには感涙も催すいい作品。法廷でのロジカルな戦いもよかった。