カエル王ちゃん

シン・エヴァンゲリオン劇場版のカエル王ちゃんのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

初日に観に行って、さらに2回目を観てきました。この物語の完結を祝う気持ちよりも喪失感、寂しさの方が先に立ったのは、きっと多くの謎を残す永遠の未完の大作だと思っていたものについにピリオドが打たれたからでしょう。

最終盤、ユイに拘り過去にしがみつくゲンドウを、成長して一皮むけたシンジが凌ぐ様に、シンジのダメさにシンパシーを持って観ていた人間としては、何故かその成長ぶりに置いてけぼりを食らった気分でした。しかし、この物語のハッピーエンドの描き方としては、最も病める存在のゲンドウの闇にシンジが光をあてることで、世界を元に戻したというシナリオはこれ以上ない着地だったと思います。これができるようになるためにシンジを立ち直らせたトウジとケンスケの友情は、まさにゲンドウが持ち得なかったものであったと思います。

またこれが最後ということで、シンジと綾波、アスカの間で「好き」という言葉がようやく直接かわされたことも良かったと思います。ただ、シンジは一体誰と幸せになるんだろうという問いは、マリにおいしいところを持っていかれた感がありますが。

しかしながら終劇後、カヲル君が望んだように、シンジはついに幸せになれたのだと深甚に感じられ、エヴァには心から拍手を送りたいと思います。

※シンエヴァ3回目鑑賞後追記。

アスカと綾波、レーション食わせるためにDVまがいの振る舞いも厭わない前者とせっせと通い妻のようにレーションを届け続ける後者。どっちも優しさの表れではあるけど、シンエヴァの綾波の無垢さが桁違いすぎて、シンジをほっとかないのは「みんな碇くんのことが好きだから」て臆面もなく言えてしまうところ、アスカが逆立ちしても及ばぬところかなと思いました。

3回目を観る前に、テレビ版や旧劇場版も復習をしましたが、新劇場版のミサトてシンジに対して怒ることはあっても冷たくすることはなく、いままでで最も優しいミサトのような気がしました。そう考えると、ヴンダーの艦長になった後もずっと重荷を負わせてきたことを悔いてるんだろうし、ゲンドウがシンジと会わないことが贖罪だと信じてきたように、ミサトもどこかシンジと以前のように親しくしないことが贖罪だったり自分への戒めだったりしたのかなと。

しかしながら、シンエヴァでうるっとくる場面はいくつもありましたが、最も琴線に触れたのは、シンジとミサトの間で交わされた最後の「いってきます」「いってらっしゃい」の件だったと思います。この場面こそ、以前の二人に戻れた美しい瞬間でした。ミサトの父が提唱した理論をシンジの父がその実践を試み、世界を破滅に向かわせた過ちをその子供たちが正し、世界の希望となる。そのストーリーを思うと、シンジとミサトの出会いは、運命的でいいコンビだったなぁとしみじみ感じます。

3月だけで3回もシンエヴァを観たせいか、1ヶ月間ずっと何かしらエヴァのことを考えて過ごしてきたような気がします。シンエヴァで自分の中でエヴァにピリオドが打たれるどこか、新たに火が付いた感すらあります。今日でエヴァの月が終わってしまうのが名残惜しく、最後せめてもの慰めに筆を執ってみました。