B5版

死刑にいたる病のB5版のレビュー・感想・評価

死刑にいたる病(2022年製作の映画)
2.7
たまには邦画でもということで、白石監督『狐狼の血』がとても良かったことを思い出して最新作を鑑賞。
したはいいが…監督が持ち味が活かし切れてない映画だった。

前作のヤクザ物は個々のキャラクター性が強く、しかしその異様な世界観の中ではそれがプラスに作用しており、また大袈裟な演技も作中の時代性もあり許容できる範囲だった。ただ、今作のような現代の日常においてはいくらジャンルがサスペンスといえどもやや演技過剰だと感じた。

一番致命的な点は阿部サダヲがサイコパスに見えないことである。
というかこの映画はサイコパスを魔法使いだと思ってる節がある。
実在のシリアルキラーでサイコパスといえば北九州一家殺人事件が有名だが、犯人は密室空間に監禁し、拷問を与えながら飴と鞭を使うことでマインドコントロールを成功させている。
それと比べると子供時代のトラウマがとかく強い物だとしても、まるで催眠術のように他者を思うがにままに仕向ける、というのはあまりにリアリティが無い。
そこは演技でリカバーできればよかったのだが、瞬きさせず喜怒哀楽も少なく、目は笑ってない一昔前の紋切り型サイコパス描写で一気に冷めてしまった。

殺人犯の子供なら罪悪感無く殺人犯が可能、のような偏見を当たり前のような温度でしたり、男女の性急な関係性だったり監督の色んな偏見が見えまくるのが悪い意味で古い映画としか言いようがない。

白石監督はこういう湿度のあるサスペンス向いてない。
センスある方のジャンルで勝てる勝負すればいいのに。
B5版

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