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ロスト・ドーターのharuのレビュー・感想・評価

ロスト・ドーター(2021年製作の映画)
4.0
「母親」になれないとき。

ギリシャで一人ウキウキ夏休みを謳歌中の大学教授レダは、ビーチで騒がしい(そして図々しい)大家族に巻き込まれ、イライラ気味。しかしその一員のニーナが、なんだか過去の自分に似ていて気になる。ある日ニーナの幼い娘エレーナが行方不明に。すぐにレダが見つけて一件落着…かと思いきや、なぜかレダは騒ぎに乗じてエレーナの人形を盗んでいたのでした。

マギー・ギレンホールの監督デビュー作。
めっちゃ良かった!でも退屈、というのもわかります。犯罪の香りがする謎の大家族や人形行方不明事件など、なんだかサスペンスっぽい感じで進むので、いろいろ深読みしちゃうんですよね。しかし本作はサスペンスでもホラーでもない、なかなか重たい人間ドラマでございました。
レダは若くして娘2人の母親となり、「24時間母親業」に苦しんでいた。特に長女が24時間「ママ」「ママ」言うもんで、休む暇も仕事をする時間もない。夫は妻にすべて任せっきりで頼りにならず、レダは一日中ずーーーっと一人で娘たちと向き合う。そしてついにそれが爆発し、家を出て行ってしまうのです。現在48歳のレダは、そんな当時の自分と同様に、現在進行形で子育てに疲れ切っている若い母親ニーナが気になり、彼女と少々話をする仲になります。
レダは自分のことを「母性がない」と言っていたけど、そんなことはないと思う。もしそうだったら、あの3年間を後悔することはないだろうし、むしろ二度と娘たちの元へは戻らなかっただろう。私には娘への愛情がないとか母親失格には見えませんでしたし、それはラストを見ればわかること。私は子育て経験がないのでこう感じたんですが、一方で経験者の方はどのように感じたのかが気になります。
ニーナはレダとは違う道を歩むようですが、それもまた彼女の選択。とりあえずどんなお母さんも大変なんだなぁと思いました。
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