へたれ

パワー・オブ・ザ・ドッグのへたれのレビュー・感想・評価

パワー・オブ・ザ・ドッグ(2021年製作の映画)
4.1
良かったとこ1 カンバーバッチの演技
観る前はイギリス人のカンバーバッチにカウボーイ役というのがミスキャストに思えたけど、結果的に大正解。単なるマチズモの代表と思いきや、家族のバランスを崩されたことへの苛立ち、隠れ家的な川で見せる子供っぽさ、亡き師匠との関係から見える尊敬を超えた愛情と、多面的なキャラクターを見事に演じていた。
キャリアの集大成とも言えるし、これは何か賞を取っても不思議ではない。

良かったとこ2 劇伴音楽
いかにもジョニー・グリーンウッドらしい音楽が、時代設定も合っている「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」を思わせる。ストリングスの不穏さに重なるように、カンバーバッチが演じるフィルにはギターのアルペジオ、キルスティン・ダンストが演じるローズには調子が外れたピアノと、劇中のキャラクターにも合わせた旋律が流れる。一曲の印象ではなく、2時間かけて長い一曲を楽しむまさに劇伴にふさわしい音楽だった。

良かったとこ3 ちゃんとしたストーリー
一見するとあまり大きな事件は起こらず、淡々と進むように見えるものの、主要人物たちのパワーゲームが終始続けられる。しかも冒頭の牛と共に移動するシーンから、大事な伏線はすべて張られているし、登場人物たちが口に出さない心情もすべて表現されている。難解なところはほとんどないけれど、結末が分かってから見返すと、さらに細かい表現が楽しめそうなので、ネトフリ配信向きでもある。
へたれ

へたれ