モクゾー

THE GUILTY/ギルティのモクゾーのネタバレレビュー・内容・結末

THE GUILTY/ギルティ(2021年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

●怪演が光る…傑作ソリッドシチュエーションスリラー

トレーニングデイ、シューター、イコライザーなど、良作の多いアントワンフークア監督のネトフリ映画。

ソリッドシチュエーションの中でも相当な傑作ではなかろうか。
警察の電話受付担当の主人公は、ずっとパソコン(電話)の前から動かないのに話はどんどん転がっていく…


ひっきりなしにかかってくる事件、事故の「911」通報…パニックに陥る人々からの電話はなかなか要点を得ない。
手探りに状況を推測しながら淡々と対応をしていく主人公ジョー。
そんななか、「まさに今、拉致監禁され車で連れ去られている」という女からの助けを求める電話をうける。なんとか助けようとするが、電話のやり取りしかできないジョーは直接動けず歯痒い思いに苛立ちを募らせる。
そして、物語が後半に差し掛かり、実は起きている事件の全貌が全く推測と異なるものだったと気がつき…
という、シンプルだが強力な、どんでん返し型スリラーである。


しかし、この映画、本当に良くできている…

電話越しに状況がだんだんわかるが手が出せないジョー。まさに映画をみる我々の立場と重なる。
そして、ジョーがだんだんと事件の真実を知っていくように、我々観客もジョーの置かれた状況を知っていく。
いずれも自らの想像力をもって起きていることをイメージしていくという、綺麗な入子構造であり、電話の先で起きている事件、いまジョーが置かれている事情の、二つを同時に我々は知っていくことになる。
これが、心地いいほどの形式美である。

スリラーやホラーは"何かが起こる予感"が怖いのであって、それが解決に向かう最後にはアクションジャンルになりがちであるのだが、この映画は張り詰めた緊張感を保ったまま、最後までアクションに移行しない。
なのに、物語の展開だけですごい見応えを感じさせてくれるのは、フークア監督の手腕の賜物だろう。

最後に1箇所だけ場所を変えるのだが、その先も開放感がある場所ではなく…というのも彼が追い込まれたどうしようも無い状況=ソリッドシチュエーションと綺麗に重なる…

そして、なによりも
この映画を成り立たせているのは、ジョーを演じるジェイクギレンホールの怪演である。
この人の映画は本当にハズレが少ない…
大きな目と豊かな表情をギューっと抑え込んだ密度の高い演技力は、ただただ電話をしている姿だけなのに、引き込まれてしまう。

ナイトクローラーとかプリズナーズとかゾディアックとか、彼は深夜に疲れ切って思い悩む役が良く似合う…笑 素晴らしい名優だ。

そして声しか出ないが、他の役者陣も良い。
イーサンホークやパットンオズワルドなど、いい役者を贅沢な使い方だ。しかしその贅沢な価値を感じられるほど、彼らが世界のリアリティを作り上げている。


おそらく出演費を抜いた製作費は極めて安いのだろうが、リッチな映画を見たような読後感を得られる。

ぜひ見るべき傑作だとおもう。