kuu

ナイトティースのkuuのレビュー・感想・評価

ナイトティース(2021年製作の映画)
3.6
『ナイトティース』
原題Night Teeth.
製作年2021年。上映時間107分。

謎めいた二人の女子を送迎する運転手の一夜を描いたNetflixサスペンススリラー。

ロサンゼルスを舞台に女子たちの本性があらわになり、思いも寄らない事態に巻き込まれた運転手の青年のサバイバルが展開する。
監督は『フロッグ』などのアダム・ランドール。
『バンブルビー』などのホルヘ・レンデボルグ・Jr、
『ホース・ガール』などのデビー・ライアン、
『ヴァンパイア・アカデミー』などのルーシー・フライのほか、ラウル・カスティーヨ、アルフィー・アレン、ミーガン・フォックスらが出演する。

大学生のベニー (ホルヘ・レンデボルグ・Jr)はアルバイト(兄ちゃんのピンチヒッター)で、ロサンゼルス中のパーティー巡りをするという女性二人組(デビー・ライアン、ルーシー・フライ)の運転手を務める。
ミステリアスな女子たちに魅了されるベニーだったが、次第に女子たちの目的と、恐ろしい正体に気付くが。。。

今作品は、VAMP (ヴァンパイア)ストーリーの中でもマフィア抗争モノに似てるかな。
ロサンゼルスのさまざまな地域を支配するVAMPとその対立する派閥。
目立たない上流階級のVAMPにとって便利な血の供給源。
等々、独特の演出を試みている。
しかし、これほどまでにロサンゼルスちゅう地域にこだわった物語でありながら、実際の街の存在感は妙に薄いし主人公はヒヨッてる(これ関係ないかな)残念なモノは少ないかな。
通りの標識やその他の小さなランドマークをクローズアップしたショットはいくつかあるものの、ベニーが血に飢えた客を街の各所に運んでいるという映画の主張は、視覚的に実現味がなかった。
ニューオリンズで部分的に撮影したことも影響しているんやろけど、この街をよく知っている人でも、エスタブリッシュメント・ショット(後に続くアクションが編集によってばらばらにされる前にそのアクションがどこで、いつ起きたのか、などを設定するショット)が平坦に混ざり合い、領域の概念が曖昧になってる。
また、Netflixが2020年のハロウィーンに合わせて製作した映画『Vampires vs. the Bronx』(昨日観ました)と非常に多くの共通点を持っている。
少なくとも『Vampires vs. the Bronx』は子供向けで、こちらは青年向けな感じはちゃうけど。
ジェントリフィケーション(高級化)ちゅう前提が、長年住んでいる住民が現在経験していることのメタファーとして適切であり、たとえそのテーマの触れる度合いは別としては認められるかな。 
ゆえに今作品は描かれている地域とは無縁のように感じられるのが残念でならない。
なら思いきって架空の土地を舞台にしても良かったんかなぁなんて思います。
また、ボイルハイツに焦点を当てる動機は虚勢を張る者たちを登場させる魅力以外に少なかった(あくまでも土地を描くことに対して)。
サイプレス・ヒル(アーティスト)をガンガン聴いてるラティーノとかリアルにおるヤツらをエキストラで使うとか、この地域で行われているディア・デ・ロス・ムエルトス(Día de los Muertos)ちゅう祭りは、ロサンゼルス地域で最も長く続いてて、最も人気のあるお祭りのひとつやし、それを物語の要素として用いたら、わずかながら地域性の説得力があったかもしれへんしリアリティーは上がったんちゃうかな。
とは云え、地域性を退かしたら個人的には興味深いVAMP作品ではある。
空虚な退廃。
ビバリーヒルズを支配する吸血鬼として漠然と表現されているが、彼らの存在意義は、スウィーニーとフォックスがセクシーで、天空のゴス服を着るという嬉しいシーンもあった。
映画の宣伝効果を高めるために2人の有名女優をキャスティングするちゅう怠けた手段を取ってんのは否めないが(特にミーガン・フォックスはカルトヒット作『ジェニファーズ・ボディ』に出演していることを考えると)、フォックスとスウィーニーがスパイク付きのイヤーカフとフード付きの薄手のローブを身につけてムチムチで偉そうな男を説教するという表面的なカメオを得ることで、メチャクチャ今作品のVAMP世界は引き締まったし、面白さが増した。
また、主役および補助的なキャラたちも後半にかけて興味をそそる存在にもなったかな。
ベニーとブレアの急成長するロマンスはこの後半に盛り上げられている。
一方、フライ演じるゾーイは、サディスティックな魅力と耐え難いほどの不快感の間で揺れ動き、ベニーの人間的な苦境に次第に共感しながらゾーイに対する不信感を募らせていくブレアを効果的に反映していた。
吸血鬼の描写は目新しくも刺激的でもなかったけど、キャストの相対的な強さによって救われていたかな。
特に、生者と死者を隔てる細い線を表現する際、キャラたちは、最高の権力者でさえも、21世紀の人間が持つ退屈さを見事に表現してる。
このユーモラスな事実は、製作者側が最終的に伝えようとしているモンなんやろけど、明確な主張としては現れてへん。
VAMPたちは、名目上はベタなバーの蛇口から血を飲み、同意した人間を餌にしてる。
事実上、ステルス性のある肉食動物の子孫である怠惰な家猫のようなモン。せや、この去勢されたVAMPの探求は、より深く掘り下げられることはない。
しかし、安っぽい恋愛、自意識過剰なカメオ出演、予想通りのオチなどありきたりかも知れないけど、VAMPモノ作品としては個人的には悪くはなかったかな。
kuu

kuu