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シラノのkuuのレビュー・感想・評価

シラノ(2021年製作の映画)
3.9
『シラノ』
原題 Cyrano.
映倫区分 PG12.
製作年 2021年。上映時間 124分。
1897年の初演以降、世界中で映画化やミュージカル化されている不朽の名作『シラノ・ド・ベルジュラック』を、ジョー・ライト監督が再構築して描くロマンティックミュージカル。
シラノ役をピーター・ディンクレイジ、ロクサーヌ役をヘイリー・ベネット(彼女と監督のジョー・ライトは実生活でもカップルで、これは彼らの最初のコラボレーション。)、クリスチャン役をケルビン・ハリソン・Jr.が演じた。
サヴィニアン・ド・シラノ・ド・ベルジュラック(1619-1655)は、実在のフランスの作家です。1897年、エドモン・ロスタンはシラノの生涯を高度にフィクション化した作品を書いた。
ロスタンが書いたこの物語は、さらに多くの物語にインスピレーションを与えてるかな。

17世紀のフランス。
剣の腕前だけでなく、すぐれた詩を書く才能を持つフランス軍きっての騎士シラノは、自身の外見に自信が持てず、思いを寄せるロクサーヌにその気持ちを告げることができずにいた。
そんな彼の思いを知らないロクサーヌは、シラノと同じ隊のクリスチャンに惹かれ、シラノは2人の恋の仲立ちをすることに。
愛する人の願いをかなえるため、シラノはクリスチャンに代わって、自身の思いを込めたラブレターをロクサーヌに書くことになるのだが。。。

ロクサーヌと聞くとポリスによる曲を連想してしまう。
ポリスの曲のロクサーヌは、南フランスの娼婦について書かれた曲であるが、今作品のロクサーヌは、主人公シラノ(ピーター・ディンクレイジ)から想いを寄せられてるヘイリー・ベネット演じる女子。
今作品ではヘイリー・ベネットはロクサーヌとして艶やかな歌唱を披露している。
彼女は力強く歌うだとか、正しい音を出すだとかを神経質に考えるでなく、自然体になって歌う。
ロクサーヌが感じていることを自由に表現していて、それが個人的には響いたし物語を前進させてたのはシラノに次ぐ印象的キャラと思う。
そのピーター・ディンクレイジが演じるシラノ(本名長ぇサヴィニヤン・ド・シラノ・ド・ベルジュラック/Savinien de Cyrano de Bergerac)はってぇと、饒舌で複雑な言葉を操ることで有名な人物です。
ものの本にはこうある。
哲学者たり、理学者たり、
詩人、剣客、音楽家、
将た天界の旅行者たり、
打てば響く毒舌の名人、
さてはまた私の心なき ―恋愛の殉教者!
シラノは、どこからどう見ても街の話題の的。
問題は、シラノが非常に背が低いこと笑。
シラノはとてもとても背が低く、それが彼の自信に大きな打撃を与えている(鼻も長い)。
また、美しいロクサーヌに恋していることも大きな障害となってる。
シラノは背が低いため、愛を告白することができず、その結果、ケルヴィン・ハリソン・ジュニア演じる新人のクリスチャンがロクサーヌの目にとまる。
シラノは、詩とラブレターの力を借りて、文盲同然のクリスチャンがロクサーヌを誘惑するのを助けるという、一種の三角関係になる。
今作品は、美しく、ドラマチックで、胸を打つ物語で、文字通りすべての俳優が能力をフルに発揮してるって感じました。
ケルビン、ヘイリー、ピーターの3人は、それぞれの持ち味を発揮するシーンが多く、輝きを放ってたし、ピーターとヘイリーのパン屋でのシーンはとても複雑な感情で、特にピーターは表情とアイコンタクトで魅惑的な演技をしています。
また、3人の俳優が登場するシーン(バルコニーのシーン)は、全員が感情的に共鳴し、完全に魅せられました。
今作品は、ドラマチックで流れるどの曲も物語のドラマに完璧にフィットしてました。
"Wherever I Fall – Pt. 1"という曲ではかなり胸に響いた。
"Someone to Say "や "I Need More "では、歌声もダンスの振り付けも楽しく、マジに、今作品の出演者はみんな歌が上手やし驚いた。
兵士のバレエから、ロクサーヌがラブレターを読む魅惑的なシーンまで、ジョー・ライト監督は自分の映画を息を呑むように見せる術を心得ているよう。
実際、素人目には振り付けはとても見事やったし見ていて楽しかった。
ダンスのシーンから殺陣のシーンまで、すべてのフレーミング、撮影、演出が巧みで、壮大なスペクタクルのシーンがもっとあってもよかったんちゃうかな。
演技もホンマ素晴らしく、歌はドラマチックな重みを与えてたし、プロットは果てしなくロマンチックなので、巧みな感動を味わうことができましたし、美しいロマンス映画でした。

日輪を見詰めすぎると何を見ても紅い円光がつきまとうように、光り輝くあなたの髪を見詰めた私は、
溢れるばかりに眼を射ったその光から離れた時、目はくらんで何を見てもブロンドの斑点(しみ) が滲んでいたのです。
いま私を襲うこの恐ろしい執着の心、
これこそ真の恋なのです。
恋には痛ましい狂乱があるのです! 
然しその恋も、必ずしも我執ではない!
鳴呼!
あなたの幸福の為ならば、私の幸福などは何時でも差上げます。
もう、死んでもいい!
この無上の楽しさ、
これこそ私、私の力で築き上げたのです!

ちょい歯の浮くような讃歌ですが、エドモン・ロスタン作、小説『シラノド ベルジュラック』より抜粋。
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