かつきよ

四畳半タイムマシンブルースのかつきよのレビュー・感想・評価

4.0
●概評

かなり面白い!名作!

サマータイムマシンブルース(映画版)、四畳半神話体系(アニメ版)どちらも鑑賞済み。
コラボには驚きつつも、サマータイムマシンブルースのストーリーはもう知っているし、四畳半神話は単体で綺麗に完結してるので、わざわさ掛け合わせることで新しい発見や楽しさが見つかるとは思えず……見る前はそこまで期待はしていませんでした。
しかしながら、なんとなく鑑賞してみて、予想以上の面白さにびっくり!!

四畳半とサマータイムマシンブルースの脚本、相性よすぎでは!?
脚本の面白さに加えて、四畳半(森見登美彦)節前回のキャラの掛け合いや語りのセンス、世界観が遺憾なく発揮されているので、良作品のいいとこ取りで、さらに高めあっている映画だと思いました。

よくよく考えるとあほらしっ!と思うような超小規模の時間遡行SF……なのに徹底された妥協のない脚本で、なんだか壮大!でも結局は生産性のない阿呆な青春の一ページ……!!笑
そんな独特な温度が見事にシナジーしていて、悪魔的融合の境地。

原作の四畳半自体も独特のSFですし、あれが好きならこのノリも大抵の人はハマれるはず

●サマータイムマシンブルースと話は同じ

まず、鑑賞して最初に思ったのは、サマータイムマシンの脚本の完成度の高さ。改めて、かなり完成度高いストーリーだ……と思って、舌を巻きました。

細部において四畳半ならではの設定やかけあい、セリフ回し、設定の置き換えはあるものの、基本的には始まりから終わりまで全て原作と同じ展開で、「君の知らない新たな展開が待ち受けている!」とか、「誰も知らないもう一つのサマータイムマシンブルース!」とか、そういう方向性の作品ではありません。

なので、私にとってこの作品は「見る前からオチがわかっている」映画であり、伏線やギミックを余さずに拾える反面、展開に対するワクワクや初見ならではの予測不能な楽しみは少なかったように感じます。
しかしながら、それを差し引いても、満足度が高かった……!とはっきり言える名作!
なんなら、変に改変されたりオチを変更されて「(原作の方がやっぱり秀逸だったな)」と思わなくていいので、脚本そのままでキャラクタを置き換えた今作は大正解だったと思います。

●どちらか片方だけ知ってる人にも見やすい

サマータイムマシンブルース(ヨーロッパ企画)単体のファンの人は、改めて脚本の出来の良さを感じながら、四畳半のキャラクタ達ならではの距離感や独特のかけあい、世界観に触れて楽しむことができそう!森見先生の癖のある台詞回しや独特の世界観はそれ自体がユニークで面白いので、全く同じ筋書きだとしても、また違った雰囲気で楽しめると思います。四畳半本編のキャラクタは出てくるものの、ネタバレになるような設定がほとんど出てこないので、この映画から見て興味を持って四畳半の原作を見ても大丈夫です。

逆に四畳半単体のファンの人も、newエピソード(IF譚)として見る価値がバリバリにあります。
脚本がまず本当に面白いので、ストーリー自体新しく楽しめるし、その中でてんやわんやする四畳半キャラ達はキャラ崩壊するということもなく、それどころかどこまでものびのびとサマータイムマシンの脚本世界を謳歌してました笑🤣
あー、そうだ、みんな、こんな感じだった……!と久々に四畳半独特の掛け合いやロマンス、ユニークさに触れ合えてとても楽しい時間が過ごせました。

ただ、どちらかというと
四畳半ファンの人がnewエピソードとして楽しむ方が、より楽しめるかなとは思いました

というのも、サマータイムマシンの脚本は知らない方が新鮮なのは当たり前ですし、それでいてキャラクターや関係性の前知識はある四畳半のみ知ってる勢の方がより物語を深く楽しめるのかなと。
想像でしかありませんが、四畳半未鑑賞の人が見るとキャラ造形が浅い状態から始まるので、そこそこ登場するキャラクタの把握に時間がかかるし、そのせいで掛け合いなどに前半は集中できず独特の面白さが半減するのでは?と思ったからです
個人的にはやはり、予めもう話のオチが分かっている、というのも大きなマイナス要素。
それでも面白いことは間違いないのですが、どちらがより、となった時は、やはり四畳半勢向けなのかな。


●できれば配信限定エピソードも視聴がおすすめ!

映画本編を分割して配信された連続アニメ版でふが、最終話は配信限定のオリジナルエピソードとなっておりました。
単なるおまけというには勿体無いくらい中身の詰まった話で、時系列で言うと本編の前日譚に当たります。
オリジナルエピソードということで、サマータイムマシンブルース脚本ではなく、原作の四畳半神話の脚本色が強いストーリーなので、より深く四畳半の世界観やキャラクタに触れることができる上に、前日譚として本編の設定補強や深掘り要素もある内容になっておりました。
個人的に本編→過去編の視聴は少し苦手なのですが(未来がわかってる話はモチベーションが下がりますし、過去編で後付設定が出ると萎えるので)それでもたまに、意義があったと思える過去編作品に出会うことがありますが、まさにそれが配信限定ストーリーでした。
この話まで含めて、四畳半✖︎サマータイムマシンのコラボ完成、ひいては相乗効果的な面白さを感じました。
気になる方は是非!!!!







※以下はネタバレ有りも含め感想をつらつらと
















※以下ネタバレ有り














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●あかしさんはやっぱりかわいい

あかしさんはやっぱりかわいい……
独特のキャラクター感、独特の感性、改めていいヒロインだなとかなりしみじみ感じました

●二人のラブロマンス

サマータイムマシンブルースにもあった主人公とヒロインのラブロマンスですが、脚本をそのままなぞるだけでなく、ちゃんと二人ならではのロマンスになっていてとってもほっこりしました。

サマータイムマシンの映画版では、未来から来た田村君に対して、瑛太さん演じる主人公は「甲本」姓だったので、ラストでは甲本は(恐らく)ヒロインとくっつく(=田村姓になる)方法を模索しまくるというオチで、ヒロインとくっつけるかどうかは未知のままでした。

今回、四畳半の主人公は「私」という一人称や「先輩」「あなた」「貴君」という表現しか出てこず、本名の設定が明かされないので、このオチに関してはどうなるんだというのが一番の楽しみでした

● 成就した恋ほど語るに値しないものはない。

原作お馴染みのこの素敵な一言で幕を閉じるんですねー!!!!!!!!!!!!!!
やっぱり明石さんと主人公にはこういうラストが似合ってるなと思って、歓声を上げました!
苗字については特に触れていなかったので、主人公「私」の苗字は、少なくとも田村ではなかったのかなとも。仮に田村だとしたら、同じ苗字ということで、初接触の時や明石さんの息子だと判明した時点でもう少し反応ありそうなものですからね。

●田村くん

実写版と同じ本多力さんが演じてたのには思わずニコシ!!
実写映画の時は、失礼ながら「上野樹里と瑛太の未来の息子、(ビジュアル的な意味で)本多さんなんだ……」と大変失礼な感想を抱いてしまいましたが、今作の田村くんはもっさりながらもどことなく愛着が持てる小動物感が漂っていて、とっても可愛らしいなと思えました

変わらずもちぐまくんが好きな明石ママも、それを大切にしている田村くんもかわいすぎます……。
二人の息子だと思って見ると、髪の作画の中に主人公と同じ特徴的な「くるん」といつ癖の作画があり、どことなく血のつながりを感じさせますね。

●送り火に誘う誘わないの件

主人公は誘いたいと思っていたけど叶わず、
しかし事情を察した明石さんが「私を誘ってください!!」と強く主人公に促し、主人公は明石さんを誘うわけですが……。
これって主人公→明石さんなのか、明石さん→主人公なのか、、、なかなかにむず痒い
タイムパラドクスを防ぐためなのだから約束を遂行する必要はないないのでは?と消極的になる主人公に対して、デートする気まんまんの明石さんや、誘われた時、みんなと一緒なのか二人だけのデートなのか確認する明石さん
小津に茶化された時、「貴方には関係ない」ときっぱり放ち主人公と行くことを明かさなかったところから見ても、今作は主人公→明石さん以上に明石さん→主人公へのラブの大きさが垣間見えてとってもラブでございました❣

●樋口先輩

田村くんが普通に知り合いっぽかった描写で、すぐに「未来の下鴨幽水荘にもいるんだ」と思い至り、謎の納得感と笑いが笑
ちゃんと田村くんが、同じ姿です未来にもいると明言してるのがなんとも。あなた何者なんですか本当に笑

● 城ヶ崎 マサキ

割と推しキャラ!
アニメ版ではラブドールの設定が強すぎる上に、ナルシストだったり変態的&癖強な描写のせいでかなり残念だったけれど、今作ではいい感じにいじられ役くらいに徹していて、それ以外は常識人的な立ち位置だったので嬉しかったです笑
時代劇の衣装、似合ってたし!

●見てよかった1作品!

興味のある方は是非!
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