塚原直彦

イニシェリン島の精霊の塚原直彦のレビュー・感想・評価

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)
4.0
2017年に賞レース界隈を賑わせた「スリー・ビルボード」のマーティン・マクドナー監督の最新作。
主演はマクドナー作品の常連、コリン・ファレルとブレンダン・グリーソン。

物語は前作同様、何気ない日常からわずかに逸脱していくことにより起こる悲劇であり喜劇。
それは対岸で響くアイルランドの内戦と重ね描かれるが、この諍いは当時だけでなく今もこれからも変わらぬ虚しさなのだと気付かされる。
その儚さを表したかのような殺風景だが美しいロケーションも圧巻。

今回も台詞の機微で笑わせてくれるセンスには脱帽で、派手さはなくとも終始不穏な彼らの感情に振り回され一瞬足りとも飽きる暇がない。
勿論上記の主役二人も素晴らしいが、物語を無駄に(だが重要というアンビバレント)引っ掻き回すバリーコーガンが相変わらずとにかく巧い。
塚原直彦

塚原直彦