ゆうすけ

BLUE GIANTのゆうすけのネタバレレビュー・内容・結末

BLUE GIANT(2023年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

2013年5月から現在まで連載が続いている、ジャズを主題とした同名漫画のアニメ映画化。原作は2015年、2016年のマンガ大賞にノミネートされ、「漫画から音が聞こえる」という触れ込みの人気漫画です。

実は、私は高校時代に吹奏楽部に所属しており、大と同じサックス奏者をしていました。彼はテナーで、私はバリトンですが……。

ただ、同じサックスと言っても吹奏楽とジャズとでは、そのサウンドや形式は全く違います。吹奏楽でも、『Take the 'A' Train』や『Take Five』などジャズのスタンダードナンバーもやりましたが、あくまで吹奏楽アレンジで、整理された音楽としてやるわけです。

一方、ジャズはコード進行とサビのメロディーのみ決まっており、あとは自由演奏。互いに呼吸を合わせて、その場だけの音楽を作り上げていく。その野生的なところに、大は惹かれたのでしょう。

文化系のジャンルが主題になっていますが、彼の動きや発言はスポーツ漫画やバトル漫画の主人公のそれで、全くの初心者である玉田のことを気持ちだけでドラムとして迎え入れるなど、めちゃくちゃです。方や、ピアノの雪祈は非常に精緻な技術を持っており、理性的に物事を判断することに長けています。そして、玉田はそんな彼らのバランサー。一番ピュアで、努力家で、劣等感に対して逃げずに立ち向かい続けられる人です。

個人的に、雪祈にすごく共感しました。ピアノはすごく上手い、自分の才能を信じている。が、故に殻を破れない。感情を剥き出しにするなんていうダサいことはしたくない。そんな薄いプライドが破られた時、想定以上のダメージを負う。しかし、そんな彼も大や玉田との関係の中で、それを乗り越えていくんだよなーと、思った矢先にあの事故。

雪祈のピアノを弾くために必要な手がぐちゃぐちゃになっているカットは、家族で見ていたのですが全員「えっ」と、言葉を失いました。あまりにも辛すぎる。

こういう無理矢理物語に緩急を出す演出って賛否あると思うのですが、まさかこういう展開が起きる物語だと思わなかったので意外性があり、絶望感も大きく、私はすごく感情が動かされたので良かったと思います。

そして、最後治療した雪祈がライブに復活して大団円と。

とにかく音楽が良くて、日本を代表するジャズピアニストである上原ひろみによる楽曲はどれも素晴らしく、演奏シーンを見るだけで泣いてしまいます。特に玉田の最後のドラムソロは感動。

そして、演奏シーンにおける映像演出も素晴らしく、雪祈の演奏の際に映し出される氷や、大の演奏では宇宙を見せるのも、音楽的な表現を、その素養がなくても視覚的に表すことで観客にわかりやすくさせ、また単調になりがちな演奏シーンを豪華に演出することにも一役買っており、見事です。

演奏シーンのCGはチープさがあるので、これが改善されればより良い作品になっていたと思うので、もう少し頑張ってほしかったところですが、作品としてものすごく完成されたものだったと思います。

漫画では、大が東京に出てくる前の話からスタートしますが、特にそれを知らなくても面白かったし、ちゃんと回想シーンなどで補完もされています。雪祈の事故のシーンを知らずに見れたことで、よりこの映画を楽しめたとも思います。
ゆうすけ

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