四半世紀の長きにわたり聴き続けているシャーラタンズがそこそこフィーチャーされている、と聞きつけて以来「これは必ず観に行かねば」と心に決めていたドキュメンタリーです。いきなりローゼズのラヴ・スプレッズが爆音で流れるオープニングに思わず身を乗り出すも、いざ談話が始まってみたらあれれ?どうにも構成が散漫というか、盛り上がりそうで盛り上がらない退屈な展開ではありませんか。
わたしはそれを「ブラック・サバスやシンプル・マインズにあんまり思い入れがないせいなのか…?」と訝りながらも眠気に耐えておりましたが、それでも何とか観続けるうちに事態が理解できてきました。本作、「伝説の音楽スタジオ」を謳っておきながら、肝心の音楽がイントロだけとかサビ周辺とか申し訳程度にしか流れないんですよね*1。関係者全員が目を輝かせてテンポ良く語らっていたメイキング・オブ・モータウンならまだしも、オーナー家族からミュージシャン勢に至るまでいかにもウェールズ〜イングランド民らしいシニカルさでもって時折ユーモアを挟みながらも淡々と当時を回顧するんですもの、せめて後ろで音量下げてでも曲を流し続けといてくれないかなー、と思いました。あ、唯一リアムだけはいつものファッキン連発でサービス満点でしたけども。
リアムと言えば、こうしてオアシスを語る際に彼の話しか聞かないってのはどうにもフェアじゃないというか「コイツ絶対話盛ってんだろ?」的な疑わしさを抱かずにいられないのですよね。実情としてはノエルにも交渉したけど断られたとかいう感じなのかもしれませんけど、それでもせめてコメントのひとつくらい取れなかったのか。そこら辺、どうにも納得いかないままでいます。
そんなこんなで、わが偏愛のシャーラタンズによるワン・トゥ・アナザーのあの何千回と聴き続けてきたイントロが鳴った瞬間は滂沱の涙を流したわけなんですけど、あまりにサクッと曲がフェイドアウトしたもんで「こんなん足りねえ!もっと聴かせろ!せっかくの映画館の音響の無駄遣い〜〜〜!」と心の中で地団駄踏んだ次第であります。ロブの件をあれほど深追いしてくれたのは予想外だったけど、それなら尚更あの曲はフルコーラス流しといてくれたって良くね?メンツ的にオジーやリアムほどのビッグネームじゃないからとかいうバランス故の構成?あー、もう、とにかく物足りない。ここに限らず、全バンドの曲をもっと流してくれ〜!
音楽好きの兄弟による思いがけないサクセスストーリーから音楽業界の隆盛と衰退を紐解く流れそのものは、英国ロックの基礎知識的にとっつきやすくまとまってるなと思うんです。が、これだけ超一級のネタとメンツを集めたのなら編集次第でいくらでもアガる仕様にできたんじゃないの…?という消化不良感が拭えません。終盤、当時の宿帳を映し出しつつ各々が総括コメントを語る場面はすごく良かったのだから、「その他大勢」としてクレジットされただけのバンドも同様に一瞬だけでも映してあげてほしかった。一見してそれと分かる通りリストが膨大っちゃ膨大だし、既に解散したり鬼籍に入ってたりする方々も多いだろうけど、せめてエンドロールくらいは。ねえ?そんなことない?
*1:ブー・ラドリーズなんかもう、気の毒になるくらい軽くサクッと流されてたしな!