千利休さんの映画レビュー・感想・評価 - 39ページ目

たかが世界の終わり(2016年製作の映画)

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ドラン好きが彼を真似して自主制作したようなクオリティ。いつものような芸術的な美しさも無ければ、選曲もイマイチ。「トム・アット・ザ・ファーム」とは真逆のアプローチをとって冒頭に全てを提示してしまおうとい>>続きを読む

次の朝は他人(2011年製作の映画)

4.4

その繊細なタッチで日本の今泉力哉監督と引き合いにされるホン・サンス監督の作品。やはり、巧い。印象的な顔のアップ等はロメールを想起させるが、モノクロにしたのは大正解。とにかく雪の景色が美しく映えている。>>続きを読む

フォードvsフェラーリ(2019年製作の映画)

4.0

これはIMAXで観たかった...。池井戸潤作品を彷彿とさせる労働者ドラマに熱いスポ根魂を宿した本作。なんともガソリンの匂いがプンプン漂ってくる作品であるが、ストーリーはド直球というわけではなく、それが>>続きを読む

俺たちに明日はない(1967年製作の映画)

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個人的に苦手な作品「ナチュラル・ボーン・キラーズ」と設定が似ているため、嫌な予感を抱きながら観賞したのだが、全くもってそれは杞憂であった。流石の名作。アメリカンニューシネマの先駆けの存在として価値があ>>続きを読む

ロケットマン(2019年製作の映画)

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〈「ボヘミアン・ラプソディ」の亡霊〉
やはり本作と比較されざるを得ないのが「ボヘミアン・ラプソディ」だろう。構成や"魅せ方"など、もろその影響を逃れざるを得ない。しかし、純粋に映画という娯楽としての強
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Mommy/マミー(2014年製作の映画)

4.4

グサヴィエ・ドランの大本命。これまでのLGBTムービーの形式を用いずに、ただひたすらに優しさに溢れた作品を作ってみせた。しかし、撮影法はこれまでの作品の集大成たるものである。例のアスペクト比の部分以外>>続きを読む

わたしはロランス(2012年製作の映画)

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グサヴィエ・ドランのセンスはMVのような短さのなかに活き、実際それは「マイ・マザー」「胸騒ぎの恋人」と続いてきた。しかし本作は打って変わって2時間40分の長尺である。それもそのはず、本作はLGBTカッ>>続きを読む

ハートブレイク・リッジ/勝利の戦場(1986年製作の映画)

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西部劇でヒーローになった自分には鬼教官が似合うとイーストウッドは睨んだのだろう。その目論み自体はハズレてないのだが、とにかく内容がつまらない。「愛と青春の旅だち」の流行りに乗ろうとしたのがバレバレであ>>続きを読む

ドラゴン・タトゥーの女(2011年製作の映画)

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デヴィッド・フィンチャー監督作の、マチズモから暴力的な魅力だけを取り出したような世界観が、トリップホップ的暗鬱さと融合し唯一無二のものになっているのは本作でも健在。前作「ソーシャル・ネットワーク」に通>>続きを読む

トム・アット・ザ・ファーム(2013年製作の映画)

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クザヴィエ・ドランのやっていることというのは、映画史における王道な表現たちをテン年代のフィルターをかけてLGBTモノに仕上げることである。本作は「シャイニング」型のホラーを上記の要素を取り込み、唯一無>>続きを読む

GO(2001年製作の映画)

4.0

存在は知っていたが内容はちゃんとは知らなかった本作。ゼロ年代の邦画の匂い満載なのはなかなか嫌ではなかった。前半は苦手なクドカン節炸裂で身構えてしまうところがあったのだが、お笑いとしてはなかなか悪くない>>続きを読む

スワロウテイル(1996年製作の映画)

4.2

〈黄金の国ジパングに想いを寄せて〉
「AKIRA」で描かれていたのは未来の街ネオトーキョー。本作が上映された96年はバブル崩壊後であるのだが、もうそのときには未来に期待を馳せることは出来なかったのだろ
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トゥルー・クライム(1999年製作の映画)

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イーストウッド90年代低迷期作のなかでは知名度が高い本作。やはり後年の彼の名作には遠く及ばないものの、サスペンスとしてはなかなかハラハラさせてくれる(最後の駆け足は流石に無理があると思ったが)。ところ>>続きを読む

真夜中のサバナ(1997年製作の映画)

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イーストウッド作でケヴィン・スペイシー出演とのことで期待大だったのだが、想像を絶する退屈さ。明らかに長すぎるし、伝わってくるものもない。でも駄作として忌み嫌うことはできない、そんな作品であった。

ブラッド・ワーク(2002年製作の映画)

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イーストウッド神話前夜の作品。サスペンスとしては可もなく不可もない出来なのだが、「グラン・トリノ」に顕著なイーストウッド特有の繊細さは若干現れ始めている。その点で90年代の「目撃」などとは一線を画すこ>>続きを読む

ザ・マスター(2012年製作の映画)

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〈アイは盲目〉
本作でも絶対的存在への不信感(勿論ここには宗教や家族も含む)を顕にられているのだが、前作とはそのアプローチがかなり異なっている。精神的に弱い立場の人間の「他人を愛しているときが一番時分
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目撃(1997年製作の映画)

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原題は「Absolute Power」。まぁそこから連想できるような典型的な話が本作である。仕上がりとしては可もなく不可もなく。本作に関してはもっとクサくサスペンス要素を強くしていればもっとウケたので>>続きを読む

胸騒ぎの恋人(2010年製作の映画)

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〈本当は怖い愛とロマンス〉
前作もかなりポップに仕上げられた本作では、恋愛のお決まりをお笑いの如く強調している。そこにはグサヴィエ・ドラン本人が実際に体験したのだろうか、鋭い描写が自分を見てくれとのよ
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劇場(2020年製作の映画)

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かなりの酷評にて閲覧注意。多分1ミリも褒めないが悪しからず。
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〈クズ男の魅力 ~ただのクズはクソなだけ~〉

Amazon Primeと映画館での同時公演が
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28日後...(2002年製作の映画)

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ダニー・ボイル監督のB級センスは嫌いになれない。特筆する点は無い普通のゾンビ映画であるが、その無難さが逆にいいのかもしれない。この手の話はやはり島国舞台のほうが盛り上がる。ゾンビゲームをプレイしている>>続きを読む

幸福なラザロ(2018年製作の映画)

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〈ネオ・ネオリアリズモ〉
本作が素晴らしい点はずばり、ネオリアリズモを現代に復権させたことであろう。フェリーニ以降のイタリア映画の空洞を、ロルヴァケル監督はいとも簡単に乗り越えてみせた。ところで本作に
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夏をゆく人々(2014年製作の映画)

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〈イタリア版「リトル・ミス・サンシャイン」〉
次作の「幸福なラザロ」の青写真的要素が強く見える本作。ネオリアリズモや差別への嫌悪はロルヴァケル監督作品共通のテーマなのだろう。どことなく是枝監督作「誰も
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マイ・マザー(2009年製作の映画)

4.2

〈19歳若き天才の告白〉
全てのカットが1枚の芸術家のような。異常なまでのシンメトリーに対するこだわりは、ヌーヴェルヴァーグ直系の美的感覚と彼のナルシシズムと結びつき、恐ろしいほどの美しさを創り出して
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最強のふたり(2011年製作の映画)

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BLM関連作品としても名前が挙がっていた本作。評価の高さに期待して観てみると、なんとビックリ。黒人差別をお涙頂戴物に繋げる気などさらさらなく、とにかくハッピーにしかさせないぞという意思だけが最後まで貫>>続きを読む

(2017年製作の映画)

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フェリーニ作と間違えてウォッチリストに入っていたので、怖いもの見たさで鑑賞。作品としては悪くないのだが、日本語訳がちんぷんかんぷんすぎて逆に面白かった。

イエスタデイ(2019年製作の映画)

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T2で描いた現代イギリスの翳りを描くには最高のテーマであろうビートルズ。一種の期待を持って鑑賞したのだが、これは確かに公開時不評であったのが頷ける。イマイチ伝えたいものは伝わってこないし、含蓄を汲み取>>続きを読む

ナイトクローラー(2014年製作の映画)

4.2

〈最後までカメラは止められなかった〉
本作も例に漏れず「タクシードライバー」系譜の作品であるが、勧善懲悪モノの如き結末はない。最後までルーは負けなかったのだ。でもこれは紛れもなく弱さの映画であり、ひた
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6才のボクが、大人になるまで。(2014年製作の映画)

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12年間の演技という奇を衒ったテーマに目がいきがちであるが、そこで描かれているのはひたすらに日常である。まさしくそれこそが本作の描くべきものであり、またきちんと描かれているものなのだ。イーサン・ホーク>>続きを読む

フランシス・ハ(2012年製作の映画)

4.2

モラトリアムの〆切で葛藤する一人の女性の等身大の姿。そこにはロマンは描かれていないが、だからこそ素の美しさがひしひしと伝わってくるものがある。弱さはあるけれど決してそれに打ちひしがれてはおらず、日々を>>続きを読む

ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密(2019年製作の映画)

4.0

〈おもちゃ仕掛けのハッタリナイフ〉
本作は上質のコメディ映画である。伝統的な探偵ミステリー映画のように見せながら、早くも開始30分ほどでそれを崩していく。早速倒叙は始まるわ探偵は活躍しないわで訳が分か
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バッド・ジーニアス 危険な天才たち(2017年製作の映画)

4.5

従来のジュブナイル映画の枠組みをぶち壊した傑作。銃も爆弾も無いのにここまで暴力的で緊張感のある映画は本当に凄いと思う。『パラサイト』と同じく"貧しさ"がテーマとなっており、美化される点が無いのも痛快。>>続きを読む

トレインスポッティング(1996年製作の映画)

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続編を見るにあたり再鑑賞。どうも世間では本作を好むことがカルチャーオタクの必須条件のようになっている節があり、その点で逆張り的に好きとは言いたくない作品の一つである。とはいえやはり本作には特有の面白さ>>続きを読む

バース・オブ・ネイション(2016年製作の映画)

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一昔前の奴隷制の時代が描かれた本作は、「デトロイト」並に忖度無しの黒人差別映画であった。重苦しくひたすらに長い110分であるが、黒人文化ないしBLMに興味を持っている人は絶対に観なければならない映画で>>続きを読む

Ray/レイ(2004年製作の映画)

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レイ・チャールズのファンとしては彼の素敵な音楽が存分に聴けて満足なのだが、内容はそこまで深くなかった印象。ドラッグの話でくらいしか陰の部分を描けないような輝かしいキャリアを送ってきた彼が凄すぎるのは事>>続きを読む

青いパパイヤの香り(1993年製作の映画)

4.3

エキゾチズムを求めて観る作品としても素晴らしいのだが、それだけではない良さがある。どことなく漂う諦念は仏教国ゆえなのだろうか。夏に観たい作品がまた一つ増えてしまった。

※ちなみに舞台はパリ郊外に設置
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リチャード・ジュエル(2019年製作の映画)

4.0

「英雄とは?」というテーマは近年のイーストウッド作で何度も問われてきたものである。本作も例に漏れず緻密にそれを描くことができている。確かに女性記者キャシーの言動には色々と問題はあるとは思うが、それでも>>続きを読む