蛇らいさんの映画レビュー・感想・評価 - 11ページ目

ひらいて(2021年製作の映画)

3.4

キャスティングは製作委員会によって左右されるのだろうが、題材的にもその振り分けが上手く機能していたと思う。細かい人物描写のニュアンスも製作費が倍以上かかっているであろう作品よりも気が利いているように感>>続きを読む

最後の決闘裁判(2021年製作の映画)

4.1

構成と主題へのアプローチの巧妙さもさることながら、映画史における、他意なく消費されてきた性差描写の回顧にもアクセスする。俗に言う映画的な快楽は、客観性の欠如した男性性の負の遺産であることを作劇の中で立>>続きを読む

DUNE/デューン 砂の惑星(2020年製作の映画)

3.5

2D版で。映画とは?というところで躓いた。本作の評価されている理由の半分くらいは、IMAXで得られる恩恵であるように感じる。とすると、日本国内のスクリーン数のおよそ1〜2%の劇場での観客しか映画として>>続きを読む

ルパン三世 カリオストロの城(1979年製作の映画)

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4K+7.1ch(ダウンコンバート)上映にて。おそらく人生で1番観た回数が多い作品。見る度にまだまだ発見があり、驚かされる。

ルパン三世は、PART1(1971)から大塚康生、高畑勲、宮崎駿といった
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街の上で(2019年製作の映画)

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脚本の巧妙さは言わずもがななので言うまでもないが、その他に特筆すべきなのは、しっかりと客観性があるということ。

例えば、古着屋の店番で文庫本を読んだり、大真面目に飲みの席で熱い仕事談義を交わしたり、
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映画大好きポンポさん(2021年製作の映画)

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脚本の掴みが唐突過ぎて設定を咀嚼するまでに時間がかかる。「幸福は創造の敵だ」の様なニュアンスで、主人公が社会やコミュニティから疎外された人物だから良い映画が撮れるみたいな描写があるが、まったくそんなこ>>続きを読む

ブレードランナー(1982年製作の映画)

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劇場公開版は初見。関係者試写会で酷評されて、キャストやスタッフから反対されてもナレーション付けちゃう人間っぽいリドリー・スコットかわいい。エドワード・ホッパーの文脈も汲んでるのか。

メッセージ(2016年製作の映画)

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何度目かの。地球外生命体の言語がこんなに現代アートの様なテクスチャーか?と思ったりもしたが、よく考えたら生き物ってデザインされ尽くした造形だったなと納得。他者を通して己を解体し直す姿が美しい。この世で>>続きを読む

砂の惑星(1984年製作の映画)

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良くも悪くも撮り直す必然性は感じた。虫が出てきてからの映像に心酔する。

007/ノー・タイム・トゥ・ダイ(2019年製作の映画)

3.4

大まかな脚本は、これまでのクレイグ版ボンドシリーズのキャラクターやストーリーから引き続く内容。これまで言うほど綿密なサーガで構成されてきたシリーズではないなのにも関わらず、ここまで過去作の続編的な作品>>続きを読む

ジェームズ・ボンドとして(2021年製作の映画)

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ボンドの人物像が時代と並行していないと評価する側が、クレイグ版ボンド発足時に求めていたものが旧来的過ぎるという笑えないオチ。

空白(2021年製作の映画)

3.5

毎度ながら、ボーダーレスに作品のジャンルやテーマにアジャストする吉田恵輔の手腕に驚かされる。日本人の国民性が孕む、来るところまで来たなという絶望の節に的確に楔を打ったような作品だ。

今、起きている事
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MINAMATAーミナマター(2020年製作の映画)

2.8

瞬間を切り取った写真を映像化するアプローチは、漫画をアニメーションに転じさせるプロセスに似ている。想像力の具現化とも言える。

人間描写には難があり、主人公の意志とアイデンティティのようなものが感じ取
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007 スペクター(2015年製作の映画)

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今度はサム・メンデス×ホイテ・バン・ホイテマ。前作で成功した007の新たなブランディングを本作で確固たるものにした。長い目で見たときと、単発で見たときで評価が大きく変わる作品だと感じた。

007 スカイフォール(2012年製作の映画)

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良質な脚本の上に乗ると、ボンドはここまで輝けるのかと興奮しっぱなし。ロジャー・ディーキンスの『1917 命をかけた伝令』でも見せた、ナイトシーンのリッチな撮影、サム・メンデスの熟考され尽くしたアクショ>>続きを読む

007/慰めの報酬(2008年製作の映画)

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交わりそうで交わらない2つの復讐にグッとくるものがある。意表を突くようなハイテンポなカッティングを、忙しないと取るかどうかでも大きく変わる。

007/カジノ・ロワイヤル(2006年製作の映画)

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ツイスト&ツイスト。007ってオーセンティックな振りしてめちゃめちゃ変な映画。クレイグじゃなければ、2021年現在まで今の地位になかっただろうと確信できる。

007 ドクター・ノオ/007は殺しの番号(1962年製作の映画)

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端々に映画的表現の普遍性を感じることが偉大。タイトルバックが恐ろしくモダン。ただ、名作かと言われればNO。

ジェーン・エア(2011年製作の映画)

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これぞ2011年代。身分制度やエンパワーメントを扱っておきながら、サブテキストが欠落していても許された最後の時代。

ザ・ハント(2020年製作の映画)

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主演の独特な顔芸の数々が光る。常にへの字に曲げた口元はクセなのか、演技プランなのか、いずれにせよ惹かれるものがある。約90分で様々な展開、スムーズなギアチェンジの手捌きを見せる。

必然性のないゴア描
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ようこそ映画音響の世界へ(2019年製作の映画)

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映画のカタルシス成分の比率が音によるものが大きい作品は確かにあるなと。同時に、ストリーミング配信作品の音響デザイナーにとって、劇場公開されないことによるモチベーションと、照準の合わせ方にも考えを巡らせ>>続きを読む

SNS-少女たちの10日間-(2020年製作の映画)

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実際に警察や関係する機関を動かした事実は、映像表現の存在意義として賞賛されるべきだし、性別に限らず性的な欲求や発言の無意識かつ意図的な加害性を今一度鑑みる機会として機能している。

裏を返せば多様な欲
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DAU. ナターシャ(2020年製作の映画)

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他に類を見ない試みであり、強烈なインパクトの中にさえ日常を垣間見せる。永久にカットがかからないのではないかという恐れが、当時の先の見えない恐怖を具現化しているのではないか。

BLUE/ブルー(2021年製作の映画)

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隅から隅まで面白いのは正義。

生まれ持った才能と生き方のセンス、先天性と後天性の両者の機微を見事な人生讃歌に転じさせている。

水曜日が消えた(2020年製作の映画)

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記号的なカットの羅列でセンスアピールも結構だが、『メメント』以降、擦られまくったメモの伝達方法のディテールは工夫したほうがいい。それをどうしてもやりたいのら別だが。

シャン・チー/テン・リングスの伝説(2021年製作の映画)

2.9

監督の作家性があまり見受けられなかった印象で、この監督でなければいけない必然性には欠ける。『ブラック・ウィドウ』のケイト・ショートランドは、『ベルリン・シンドローム』などの抑圧された女性を描いている点>>続きを読む

ルパン三世 ハリマオの財宝を追え!!(1995年製作の映画)

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出崎統ルパンはなぜ銭形をふわふわした酔っ払いのように描くのか疑問。各キャラクターを生かしきれておらず、設定だけが一人歩きしている。

小林清志の功績を讃えて。

オールド(2021年製作の映画)

3.5

序盤の物語の舞台への案内人役がシャマラン本人であることが、メタ的で面白い。脚本、ロケーション、登場人物の配置を統括し、舞台で演出するという行為自体を治験に重ね合わせている。その上で踊らされる役者を俯瞰>>続きを読む

勝手にしやがれ(1960年製作の映画)

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ゴダール自身が批評家出身だからか、それとも彼の深層心理がそうさせるのか、極めて自己批判、懐疑的な視点が芯にある。女性と男性の決定的なギャップとアイロニカルな自省を同居させた作劇は、見事としか言いようが>>続きを読む

新幹線大爆破(1975年製作の映画)

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同じくディザスタームービーである『ジャガーノート』にも引けを取らない職業人讃歌。登場人物の数だけ四方から沸き立つカタルシスが見事。

千葉真一を偲んで。

逃げた女(2019年製作の映画)

3.3

余白を観客が埋めて、始めて見えてくる主題の鮮明さに頷かされた。

監視カメラ、インターホン、映画と、少し離れた場所から自分を俯瞰で見てみるという試みは、勇気を要する行為だ。人の意見を聞いてみるというこ
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ローマの休日(1953年製作の映画)

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劇中に登場する『Giolitti』のジェラートを食したのをきっけかけに。おすすめはダークチョコレート。

アン王女が一生忘れることのできない思い出だと語ったのが、公の一枚フィルターを挟んだシチュエーシ
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孤狼の血 LEVEL2(2021年製作の映画)

3.5

前作から3年の月日を経て公開された本作。作品の推進力でもあった役所広司扮する大上が退場し、尻窄みが懸念されていたが、見事に前作と肩を並べる程の熱量が息を巻いていた。演者とスタッフ間の信頼関係と意気込み>>続きを読む

仁義なき戦い(1973年製作の映画)

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まさに拳銃という字の如し、拳で殴るかの様な銃捌きにすらアクション映画の歴史を感じる。ヤクザを美化しないことでアウトローとしての悲哀が湧き上がるという点では、『俺たちに明日はない』にも通底している。

レディ・イン・ザ・ウォーター(2006年製作の映画)

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遠近感を自在に操るカメラワークや、水面、洗濯機、窓枠など、何かを越したショットもケレン味が溢れている。

ナーフが召喚される場所が、アパートの中央に位置するプールでなければいけなかった理由を語らないの
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黒い司法 0%からの奇跡(2019年製作の映画)

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囚人たちの演技が凄すぎてマイケル・B・ジョーダンが食われた印象。しかし、丁寧に、実直に描かれる絶望感が身につまされる。演出面に関しては異論はないが、脚本のシークエンスとシークエンスが積み重なることによ>>続きを読む