マンボーさんの映画レビュー・感想・評価 - 4ページ目

透明人間(2019年製作の映画)

3.7

現代、もしくはやや近未来的な世界観のスリラーやホラーとしては、一面よくできている点があるものの、透明人間の発覚のしかたに新鮮味がなく、人間の描き方も割合平板に思えて、ひたすら悲劇が連鎖してゆく救われが>>続きを読む

ザ・ハント(2020年製作の映画)

3.8

「透明人間」が観たくて映画館に駆けつけたら、二本立てで本作がかかっていた。だから全然期待していなかったのに、見始めたらこれがどうして、思った以上に面白かった。

序盤は群像劇スタイルで、何の理由も語ら
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ヤクザと家族 The Family(2021年製作の映画)

4.0

先月公開の井筒監督の「無頼」が、昭和を通したヤクザの一代記なら、本作はその続きで平成のヤクザの衰退と夭折を描いた作品。

序盤、主人公がヤクザになるまでや、抗争を描くあたりは、よいシーンはあるものの、
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スワロウテイル(1996年製作の映画)

2.1

地上波では少なくても二度はみているけれど、どうもよく憶えておらず、映画館で観れば理解できるかなと期待を込めて再鑑賞。

ところが、今回も全く良さがわからなかった。

裏町、路地裏、貧民街、貧しい移民た
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花とアリス(2004年製作の映画)

3.4

昨年公開のラストレターが思いのほか面白かったので、食わず嫌いだった岩井俊二監督の旧作を見てみたいと思い、息を止めるような気持ちでコロナ禍真っ只中の東京は池袋駅そばの新文芸坐に潜り込み、二本立てを鑑賞。>>続きを読む

男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎(1983年製作の映画)

3.9

1983年の年の瀬に公開されたシリーズ第32作。

冒頭の寅さんが旅先で見る夢は大抵、突飛な時代や設定なのに、今作では珍しく当時そのままが背景になっている。

行きがかり上、寅さんとも交流があった妹さ
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ブリング・ミー・ホーム 尋ね人(2018年製作の映画)

3.8

もし自分が邦題をつけるなら、本作は「マンソン釣り場の惨劇」か。

主人公のきれいな中年女性は、不幸になればなるほど、厳しい表情になればなるほど、凄惨で峻厳な美しさを帯びてくる。

義弟、釣り場の人々、
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声優夫婦の甘くない生活(2019年製作の映画)

4.0

仕事のない年配の夫婦の物語ということで、アキ・カウリスマキの「浮き雲」を思い出した。カウリスマキの演出はとにかく抑制が効いて品良くあっさりしていて、そのおかげでじわじわとその良さが胸に迫ってくるけれど>>続きを読む

フライトナイト/恐怖の夜(2011年製作の映画)

3.1

何だかよくわからない隣の家の怪力バンパイヤ兄貴?が、吸血して仲間を増やしながら、ターミネーターみたいに主人公とその恋人と母親を、ひたすら追いかけてくるのだが、物語が進むうち段々と現実味が薄れてしまい、>>続きを読む

シカゴ7裁判(2020年製作の映画)

4.1

このレビューはネタバレを含みます

法廷劇はどうも苦手で、どうしても眠気との苦闘を強いられるやっかいな体質なもので、足を運ぶことに躊躇もあったが、どうしても観たくて観たくて仕方なくなり、コロナ流行りの世情、池袋より先には行くまいとしてい>>続きを読む

男はつらいよ 花も嵐も寅次郎(1982年製作の映画)

3.9

シリーズ第30作、1982年の年の暮れの公開作品。

江戸や明治の頃の様子すらうかがえるような葛飾柴又の映画セットのような街を、家族とのいつもの理不尽な狭量さがきっかけとなる大喧嘩の末に飛び出した寅さ
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喜劇 愛妻物語(2020年製作の映画)

3.3

悔しいことに全く笑えなかった。

一度、シナリオで佳作に入賞し、シナリオライターを肩書きにしているが年収は50万、気が弱く、そのくせ性欲だけは一人前以上のダメな夫と、収入のない夫のために働かざるを得な
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劇場版「鬼滅の刃」無限列車編(2020年製作の映画)

3.7

ずっとほとんど観る気はなかったけれど、藤子Fさんの、あらゆるヒット作にはヒントがあり、とにかく虚心で観るべしとの言葉を思い出し、人の少ないレイトショーを選んでとうとう観てしまった。

機関車や夜の森に
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パブリック 図書館の奇跡(2018年製作の映画)

3.8

ニューヨークから西に向かい、ペンシルべニア州をまたぐと、オハイオ州に入り、その西端の都市シンシナティが舞台。ニューヨークからの距離はおよそ915キロ、車の移動ならおよそ10時間。

内陸性の気候で、夏
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無頼(2020年製作の映画)

3.9

戦後の地方都市で、ヤクザ組織が勃興し、勢力を拡大して抗争に明け暮れるさまを描いた、東海地方のある親分の一代記の体(てい)の実録風作品。

少しヤクザに対する共感が見えて危うさを感じないわけではないし、
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私をくいとめて(2020年製作の映画)

3.9

独身アラサーで東京の一人暮らし女子、のんさん演じるみつ子は、仕事では精神的支柱となった面倒見のよい一人の先輩を頼りに会社にとけ込んでいて、休みの日には孤独を埋めるように恐る恐る食品サンプルの製作体験に>>続きを読む

ニュー・シネマ・パラダイス(1989年製作の映画)

4.1

このレビューはネタバレを含みます

ノスタルジーとセンチメンタリズムで物語を作ることは、ストーリテラーとしては許されざることだと思う。

この二つの感情を押し出した物語作りに手を出すことは、現実世界で麻薬に手を出すことに似ていて、自分の
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男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋(1982年製作の映画)

4.0

シリーズ第29作、1982年8月公開作品。

男はつらいよの名作というと、夕焼け小焼けや相合傘が相場だという気がするけれど、個人的にはそれに割って入るぐらい好きな作品だった。

主な舞台は京都市内と、
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泣く子はいねぇが(2020年製作の映画)

3.9

ヒリヒリした。
下手なサスペンスよりも、次の展開に進むことに、恥ずかしながら不安と躊躇を感じた。

奇妙にリアルな大小の悲劇の連鎖が、多忙でメンタルが弱り気味の自分には今回はなかなか応えた。

また苦
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佐々木、イン、マイマイン(2020年製作の映画)

3.8

まるで和製パンク。海外のパンクロックとの違いは、意外にポップで、フォークや演歌に負けない人情味もある。

脚本家がやりたいことはよく分かる。佐々木の意外性あふれるキャラは、風貌は男くさくて全然可愛くは
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Mank/マンク(2020年製作の映画)

3.9

「市民ケーン」は、今観ても、とことんこだわり抜いたことがよく分かる映画の歴史を変えた見事な作品だと思うし、オーソン・ウェルズについて書かれた記事も、本作の公開に関係なく以前から読んでいたけれど、本作を>>続きを読む

燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)

3.9

女性同士の同性愛の映画かと思ったら、性別を超えた結ばれない恋を描いた作品に見えた。

最終盤の奥ゆかしさ、そして余韻がすばらしい。振り返らず孤島のお屋敷を立ち去ろうとする主人公にかけられる声。そして、
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アルプススタンドのはしの方(2020年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

演劇の脚本だとすれば、まぎれもない傑作だと思う。

ただ、映画として観たときに、ほとんど変化のない構図で、あえて大きなスクリーンで上映する必要性はそれほど感じられなかった。

でも、こんな演劇的な実写
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男はつらいよ 寅次郎かもめ歌(1980年製作の映画)

4.0

山田洋次監督は、本当に北海道が好きなんだなぁとつくづく感じるシリーズ第26作、1980年から1981年にかけての正月映画。

昔のテキ屋仲間の死去を知り、律儀に北海道は奥尻島まで、テキ屋仲間たちの不祝
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シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい!(2018年製作の映画)

4.1

熱狂的な支持者はいるが、大衆受けには程遠かった劇作家のエドモン・ロスタンが、1897年の年の瀬に短期間で何とか作り上げたフランス演劇の不朽の名作「シラノ・ド・ベルジュラック」に、さらに作品ができあがる>>続きを読む

ばるぼら(2019年製作の映画)

3.4

学生時代を過ごした実家の本棚には手塚治虫の作品がかなりある。「ばるぼら」の前に連載されていた「シュマリ」も、「ばるぼら」のあとに連載されていた「奇子」も、「きりひと讃歌」や「MW」、「I・L」なんて近>>続きを読む

男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花(1980年製作の映画)

3.8

1980年の夏公開、1972年に日本に復帰した沖縄を舞台にしたシリーズ第25作。

高倉健さんの網走番外地の南国の対決は、1966年の作品で、返還される前の沖縄の様子が窺える作品だったが、本作では返還
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なぜ君は総理大臣になれないのか(2020年製作の映画)

3.9

この作品を撮った監督はつくづく小川淳也氏のことが、好きで好きで仕方がないのだろう。

本作は一見揶揄(やゆ)めいた失望を感じさせる題名のようで、実際の内容は贔屓(ひいき)の引き倒しといってよく、そう考
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羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来(2019年製作の映画)

3.8

驚くほどに日本的な中国産アニメーション映画。作者は、きっと1980年台以降の日本のアニメや漫画を読み尽くしてきた人ではないかと思ってしまった。

様々な先人の作品のアイデアに手を加え、形を変えてコラー
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マーティン・エデン(2019年製作の映画)

3.7

このレビューはネタバレを含みます

ジャック・ロンドンが本作を描かずにはいられなかった理由はよく分かっても、あえてこのストーリーを、どうして映画化したくなったのかを理解するのは難しい。19世紀から20世期を跨いで、アメリカの作家として成>>続きを読む

彼女は夢で踊る(2019年製作の映画)

3.6

薄汚れて、風に土埃の舞う雑踏も今は昔。現在では清潔な街に生まれ変りつつあるのに、その街路を横切った先に見えるのは、蔦の這うくたびれきった外壁に、一ヶ所だけ点かない文字のあるネオンサイン。

古ぼけた外
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男はつらいよ 噂の寅次郎(1978年製作の映画)

3.8

シリーズ第22作。

季節は秋から冬にかけて、博の父、志村喬扮する引退している北海道大学、インド哲学科の名誉教授と、静岡大井川方面から北上する寅さんとが、木曽路は長野の南西部辺りで偶然旅行中に出会い、
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TAXI NY(2004年製作の映画)

3.5

原作のフランス版は、序盤で集中力が途切れたのに、今作は最後まで見てしまった。

タクシードライバーで凄腕運転手の、横幅のある黒人女性のキャラクターと、とことんドジで、裏目裏目で追い込まれていくマザコン
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ミッドナイトスワン(2020年製作の映画)

4.1

すごいものを観たし、観させられた。

草彅剛の演技に味があるのは、細切れでほんの少しだけ見た「僕の生きる道」とか「僕と彼女と彼女の生きる道」という題名のドラマで知っていたつもりだけど、こんな役をこれほ
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海辺の映画館―キネマの玉手箱(2019年製作の映画)

3.9

冒頭30分は何を観せられているのかと戸惑ったし、観客の誰かが席を立つのではないかと心配した。
あまり人が入らないこともある映画館はいつになく満杯に近く、年配の方の間に、ほんの少し若い人の姿も見えた。つ
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タゴール・ソングス(2019年製作の映画)

3.6

ベンガルという言葉を知ったのは、ペルシャ(イラン)の千夜一夜物語の中のいくつかの作品を読んでいた時のことだった。

当時のペルシャ人にとって、世界の東の果てはベンガル地方だったようで、遠い異国としてた
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