マンボー

ザ・ハントのマンボーのレビュー・感想・評価

ザ・ハント(2020年製作の映画)
3.8
「透明人間」が観たくて映画館に駆けつけたら、二本立てで本作がかかっていた。だから全然期待していなかったのに、見始めたらこれがどうして、思った以上に面白かった。

序盤は群像劇スタイルで、何の理由も語られず、いともあっさり、理不尽に人々が次々死んでしまう狂気の展開に怖気付いたが、物語が進むにつれ、ご丁寧にも仕掛け人も動機も経緯も全てを洗いざらい語ってくれる親切設計のストーリーテリングが、あまりにも潔い。

結局は、幼稚園児のような単純な動機と、王様のような発想と財力がなしえた悪ふざけのような狂気の企画だと判明するが、全てをシリアスに捉えてよいのか、もはや笑ってしまってよいのか、その判断に困るような気持ちにもなった。

序盤、ほぼ意味のない子豚の登場に、今後の伏線を疑ったところ、珍しくドンピシャ。

中盤までは、先手を打ってこちらの想像を軽々と上回ってくる奇抜な展開と、暴力による人の死が一瞬だというリアルに強烈に呑まれたが、終盤は全てが明かされて、展開そのものに驚きが全くなくなり、戦いも長々と描かれて暴力のリアリティは一気に薄れ、全てが予定調和的に収束してゆく印象が惜しいと感じた。

現代的、近未来的でスケールの大きなアイデアと才気で、観客を思うさま振り回して術中にはめ倒しながら、最後に加速が落ちて、凡庸に堕した印象。全てがあからさまな点には知性を感じるし、よい印象もあるが、あまりに翳り(かげり)がなさすぎて、観終わった後に割り切れてしまい、後腐れがない分余韻もなくて、物足りなさと、もったいなさを感じた。

この中盤までのパンチ力で、終盤さらに盛り上がっていたなら、きっとはるかに話題となって大ヒットするか、カルトの名作として長く語り継がれる作品になっただろう。