マンボー

アルプススタンドのはしの方のマンボーのネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

演劇の脚本だとすれば、まぎれもない傑作だと思う。

ただ、映画として観たときに、ほとんど変化のない構図で、あえて大きなスクリーンで上映する必要性はそれほど感じられなかった。

でも、こんな演劇的な実写映画があることで、演劇に興味を持つ人が増えるのならば、またアイデアひとつで、たとえ素人でもプロを驚かすような創作が可能だということを証明する作品でもあり、こんな映画があることが、創作全体の裾野を広げる意味を持つことは大きいとも思う。

女性三人の個性が良い。みんなそれぞれによいけれど、特に演劇部の脚本家を演じたあすは役の女性の佇まいが魅力的に見えた。そして、ひかる役の女性の顔にかかる髪もそのままに応援する表情も、狙いまくったシーンなんだろうけれど、それでもやっぱりよかったし、優等生役の表情を変えない抑えた演技も、独特で案外難しいのではないかと思う。

反面、これは役者の問題ではないけれど、男性がスイングの違いを言葉では説明せずに、動作で繰り返すシーンは、ほぼ意味がわからなかったし、終盤タッチアップのルールを教えてあげないのも不自然だった。

ラストの数年後のシーンの二つの種明かしも本作の魅力。万年補欠のやのくんと、茶道部のその後の活躍。あきらめずに、前向きな取り組みを地道に貫いた空回りの象徴のような人物たちが、思いがけず大きな成果を上げている。現実に比べると、ちょっと理想主義的で、おとぎ話チックでもあるけれど、そんな世の中であってほしいという人々の願望をそれとなく叶えるサービス精神を嫌いだと思う人はいないだろう。

そんないかにも現代の学校教育的な精神を背負った脚本だけれど、全体にアイデアも詰めも秀逸だと思う。ただ個人的には、自分の向き不向きを早い段階で見極めることも大切で、ちょっと理想主義的すぎるやの君の活躍はやりすぎだという気も。

でもこの監督と、おおむね若い役者の皆さんは、この題材を元に、これ以上望むべくもない、本当によい仕事をされていたと思う。