いずみたつやさんの映画レビュー・感想・評価 - 9ページ目

いずみたつや

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マティアス&マキシム(2019年製作の映画)

3.7

重く厳しいテーマを扱っているものの、どこか軽やかでもある点が本作の1番の魅力ではないでしょうか。

この軽やかさは、主人公マキシムに向けられる周囲の視線にあるのではないかと思います。

実の母のような
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ミッドウェイ(2019年製作の映画)

3.5

画面を覆う軍艦と戦闘機。燃えさかる戦場、砲弾が頭をかすめるドッグファイト。

大規模な戦闘シーンの迫力は凄まじいです。シアトル・タイムスが『プライベート・ライアン』と『インデペンデンス・デイ』と表現し
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mid90s ミッドナインティーズ(2018年製作の映画)

4.3

年上のかっこいい人たちを憧れの眼差しで見つめてた頃を思い出してザワっとしました。

90年代をファッション的に扱うような嫌らしさがなく、安易にノスタルジーに浸らせることを巧みに回避しているのが素晴らし
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ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー(2019年製作の映画)

4.2

周りはバカで無計画なヤツらばかり、という思い込みがひっくり返されることから始まる物語。

これは映画全体を通して描かれるテーマでもあって、「人間は多層的である」ことを爽やかに描いた心地よい作品です。
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ブルータル・ジャスティス(2018年製作の映画)

4.2

容赦ないバイオレンス描写、誰が死ぬのかまったく予想できない緊張感は、紛れもなくS・クレイグ・ザラー監督作品の味わいです。

異常に間延びした(リアルとも言える)アクションも監督の特徴で、それが物凄く不
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カラー・アウト・オブ・スペース 遭遇(2019年製作の映画)

4.5

“色”に襲われる家族を描いたホラー。しかも主演はニコラス刑事…とくれば喜ぶのは僕です。「B級ホラー」という志の低そうな呼び名で片付けられてしまっては困る!

なんと本作はあのSFホラーの祖、ラヴクラフ
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アングスト/不安(1983年製作の映画)

4.0

「あ!これダーレン・アロノフスキーがやってるやつやん!」とハッとしました。

俳優の体にカメラを固定した斬新なカメラワークを『レクイエム・フォー・ドリーム』で見て、「こんなおもしろい撮り方があるのか!
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ヒュービーのハロウィーン(2020年製作の映画)

3.6

あー今日はなんか肩の力を抜いて、頭をカラッポにして、気楽に映画が見たいなあ。

お、そういえば今日はハロウィーンだし、なんかちょっとホラーっぽいような、でも笑えるコメディー映画はないもんかな。

そう
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透明人間(2019年製作の映画)

4.0

あそこに何かいる…?という怖さはとても映画的であり定番のホラー演出のひとつですが、何度見てもやっぱり怖い。

不自然に空いた空間のショットがどうしようもなく不安にさせます。

また「いないもの」の存在
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WAVES/ウェイブス(2019年製作の映画)

4.5

若い心は脆い。それはまだ多くの困難を経験していないから。嫉妬、挫折、後悔、まだまだ未知の感情が胸の奥底にひっそりと眠っています。

僕自身、青春期という決してキラキラとした輝きだけではない恐ろしい時代
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SKIN/スキン(2019年製作の映画)

3.5

「心を入れ替える」「生まれ変わる」言葉で言うのは簡単ですが、それがどんなに困難で痛みを伴うものかを包み隠さず描いた強烈な作品。

生まれ育ったコミュニティや家族関係、植え付けられた考え方を断ち切る作業
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ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語(2019年製作の映画)

4.1

『若草物語』と言えばウィノナ・ライダー可愛かったなー(全然世代ではないんですが)程度のもので、それほど熱心なファンではありませんが、面白かった!

基本的なストーリーは変わっていないようですが2つの時
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デッド・ドント・ダイ(2019年製作の映画)

2.9

ジム・ジャームッシュらしいとしか言いようがないオフビートなゾンビ映画。ゾンビ映画と思って観れば確かに戸惑う作品ですが、ジム・ジャームッシュ作品と思えば想像の範疇といったところでしょうか。

ジャームッ
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フェアウェル(2019年製作の映画)

2.8

死との向き合い方の「慣習」についての作品ですが、その異様さをアメリカ育ちの主人公視点からあぶり出し疑問を呈す、という立場を取っているようで、実はそうでもない立ち位置の曖昧さに非常にモヤモヤさせられまし>>続きを読む

ナイチンゲール(2019年製作の映画)

4.0

流刑地としてのタスマニア。イギリス人のアイルランド人に対する強烈な蔑視などの描写は初めて知ることも多く、非常にショッキングです。

自分より弱い者を見つけて蔑む”迫害のピラミッド構図”のやるせなさ。惨
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初恋(2020年製作の映画)

3.6

何カ所か突然アニメーションが挟まれるシーンがあるんですが、三池監督のインタビューを見ると、スタントマンの高齢化と予算の問題から、危険なアクションシーンはリストが高いと判断した上での苦肉の策だったそうで>>続きを読む

ジュディ 虹の彼方に(2019年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

想像の範疇を超えないところがもどかしくもあり、ただこれは伝記物の性か…と思う部分もあり。

レネー・ゼルウィガーの演技はそれは迫力のあるもので素晴らしいですが、個人的にはちょっとコッテリしすぎでは…と
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ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ(2018年製作の映画)

3.8

またしても中国から驚きの野心作が登場しました。

ビー・ガン監督も自身の作品を振り返って「実験映画と商業映画の間にある作品」と説明しているように、非常に美的センス抜群で、アーティスティックでムーディー
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ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY(2020年製作の映画)

4.0

ジョーカーに身も心も尽くす「良き恋人」であるハーレイ・クインがフラれるところから始まるストーリーにわくわくせずにはいられません。これは女性たちの自立を描いた極めて現代的な物語。

オープニングからポッ
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劇場(2020年製作の映画)

3.5

日本社会は若さに異常に羨望の眼差しを向けますが、果たして「若いこと」は良いことなのでしょうか…。

才能のなさを認めてからがスタートなのに、それができない愚かさ。家でじっと思考だけを巡らせ、焦りだけは
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ランボー ラスト・ブラッド(2019年製作の映画)

4.2

映画館に行くのもなんか不安な日々が続いておりますが、ランボー最新作とあっては公開初日に行かねば!とソーシャルディスタンス鑑賞して参りました。

驚きなのはほとんど心が壊れてしまっていたランボーが、人間
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野性の呼び声(2020年製作の映画)

3.5

もう何度目かわからない映像化ですが、やはり最先端のCG技術によって、犬の表情が豊かに描かれているのは今作の挑戦であり、これまでの作品と一線を画する点だろうと思います。

犬が主人公であるため技術的に再
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黒い司法 0%からの奇跡(2019年製作の映画)

4.3

堂々たる演技合戦に思わず息を呑みました。

残酷な差別や偏見に基づく醜い主張は、決して過去のものではないし、私たちにとって対岸の火事でないことは言うまでもありません。

数々の理不尽に対して主演2人が
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チャーリーズ・エンジェル(2019年製作の映画)

3.9

クールな女性たちの変装とカッコイイ振る舞いを見ているだけで十二分に楽しい作品でした!

前シリーズに比べて派手さも華やかさもカンフーもスケールダウンした感は否めませんが、とはいえこの3人をまた観たいな
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名もなき生涯(2019年製作の映画)

4.5

断固としてヒトラーへの忠誠を誓わない主人公に対して、「もっとユーモアを持て」と言う村民のセリフは非常に腹立たしかったです。

目の前の理不尽な要求に疑問を投げかける人、認められない行為に拒否を示す人に
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スキャンダル(2019年製作の映画)

3.8

平気な顔をしてセクハラするわ圧力をかけるわ、男尊女卑のオヤジどもがあまりにも不快で、こんなことが日本でもあるんだろうと思うと鬱々とした気分になります。

ジェンダー・ギャップ指数が153カ国中121位
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プリテンダーズ ふたりの映画ができるまで(2018年製作の映画)

3.0

ゴダールへの露骨なオマージュにはじまり、『ラスト・タンゴ・イン・パリ』の引用など、いかにも「映画オタクの学生」という感じが恥ずかしいような、でも少し懐かしいような、なんとも甘酸っぱい気持ちで観ました。>>続きを読む

ミッドサマー(2019年製作の映画)

4.0

『ヘレディタリー』と非常に多くの共通点があることは、多くの方がおっしゃる通りだと思います。

僕が2作品で共通する最も好きな部分は「絶望が同時に強烈なカタルシスをもたらす」というところです。

爽快で
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ザ・ビースト(2020年製作の映画)

3.0

このレビューはネタバレを含みます

きました!「未体験ゾーン」常連のニコラス刑事作品!

船で密輸されていたジャガーと護送中のテロリストが同時に逃げ出してどうしましょ!という、安易な足し算具合が爽快です。

殴られるたびに雄叫びをあげて
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プライス -戦慄の報酬-(2019年製作の映画)

3.5

奇人にして天才のイライジャ・ウッドが出ていることしか知らずに観たので、ジャンルもあらすじも何も分からず、「一体何を観せられているんだ…」という困惑込みで楽しめました。

「未体験ゾーン」はこういう貴重
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屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ(2019年製作の映画)

4.2

醜いものを醜いままに、残酷なものを残酷なままに、つまり「手抜きして甘いものを見せるな」というのはどんな作品にも常に思っていますが、よくもまあ…ここまで手抜きなしでやれたな…と。

しかもその異様な空間
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ザ・ピーナッツバター・ファルコン(2019年製作の映画)

4.0

施設の窓から世界へと「生まれ落ちた」ファルコン。

この主人公を演じるザック・ゴッツァーゲンがとにかくキュートで目を引きます。

彼だけでなく、役者陣のキュートさは感動を覚えるレベルです。

彼の脱出
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1917 命をかけた伝令(2019年製作の映画)

4.0

全編ワンカット風というのは近年では『バードマン』がありましたが、今回はずっと話がシンプルなため、よりストイックに「技術の映画」として楽しめると思います。

天才ロジャー・ディーキンスが腕をふるった、目
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ハスラーズ(2019年製作の映画)

4.2

ストリッパー版『グッドフェローズ』とか言ったらそれっぽいなぁと思うぐらい、ギャング映画を思わせる成り上がりの高揚と、盛者必衰の侘しさが漂っています。

生きるために、子どものために奮闘する彼女たちの漲
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ドミノ 復讐の咆哮(2019年製作の映画)

4.3

紛う方なきデ・パルマ映画でした!

スリリングな視線のやりとり、エレベーター、スローモーション。毎度のことですが面白い演出の連続で、見る者の心を掴んで離さないテクニックの連発に感心させられます。

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テリー・ギリアムのドン・キホーテ(2018年製作の映画)

3.8

構想30年、頓挫9回…!ひとまずお疲れさまでした。

映画の中で映画撮影をする入れ子構造で、さらに監督自身のドン・キホーテ制作トラブルそのものをネタにしたような箇所もあって、いつも以上に内省的な映画な
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