ウシュアイア

Vivy -Fluorite Eyeʼs Song-のウシュアイアのネタバレレビュー・内容・結末

Vivy -Fluorite Eyeʼs Song-(2021年製作のアニメ)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

『東京リベンジャーズ』が「時をかけるヤンキー」ならば、本作は『時をかけるAI』。

Vivyと名付けられた「歌で人を幸せにする」というミッションをもつ歌姫AIが、AIが暴走し人類が滅亡する未来から転送されてきたAI・マツモトに導かれ、AIと人間の歴史を修正するシンギュラリティ計画を遂行する、というお話。

SFの傑作は、クリエーター(作家)の思考実験であり、視聴者(読者)への問題提起を内包しており、シンギュラリティ計画の中で出てくる人間とAIをめぐる事件とその修正は、リアルな人間と人間が利用しているもの(AIだけではない)との関係をめぐる問題のアナロジーになっている。

AIが管理する宇宙ホテルで事故が起きた場合の責任問題は分かりやすい。「AI人権法」の賛否や適用範囲は「アニマルウェルネス」にもあてはまる部分はある。

そして、Vivyの「どうすれば心をこめて歌うことができるのか」という問いは、人間性はどのようにして生まれるのかというところにつながっていき、最終回では明確な回答をだしており、爽快である。

結末はほぼ予想がつくが、いろいろと考えさせられる投げかけがあるストーリーだった。前編後編に分けて映画にしてもいいくらいのクオリティ。

1つ難点を挙げるとすれば、登場する主要なAI搭載の人型ロボットはすべて女性型であるという点について、ジェンダーバランス云々言うつもりはないが、せっかくのSFの傑作なのに美少女アニメ感が出てしまって、一般層に届かない要因にならないかと心配になる。

Vivyは普段は歌手としてプログラムされており、歌唱シーンもありながら、一方で戦闘用プログラムが組み込まれることにより、暴走したロボットやテロリストと戦うシーンもあり、映像も美しさと迫力の両方を兼ね備え、エンターテイメント性にも富んでいる。

マツモト役の福山潤さんの緻密に構築されたお芝居も素晴らしかった。

続きものの『進撃の巨人』などを除くと、2021年ではベスト3作に入る作品。思いのほかあまり知られていないのが残念。
(加筆修正して再投稿)
ウシュアイア

ウシュアイア