モモモ

シー・ハルク:ザ・アトーニーのモモモのレビュー・感想・評価

4.3

1話
テンポ良し、オリジンを卒なく処理し、初バトルも卒なくこなす。MCUのアメコミ化が更に顕著に。宇宙人?そりゃいるでしょ。ヒーロー?みんな知ってるでしょ。超人?そりゃなる人もいるでしょ。という前提あり気故のタイトな1話。キャップへの執拗な童貞いじりで不快になるのは、いつも女性が受けている不快感を男性に体感して貰おうという狙いだろうか。まあ、ハルクに対して余りにもオブラートに包まない物言いがあんまりだが、仲良し従兄弟でそのあと乾杯してるし、問題なしか。サカールからの何か(今後の伏線?)にトニーとの友情、思った以上にクロスオーバー作品。それもアメコミ化を加速させているが。

2話
30分という尺の短さがいい。自己犠牲こそヒーローの本質、望んでいなくとも、と言うテーマをより身近に(職のクビ)。インクレディブルネタを遂に直接的に拾える日が来るとは。大歓喜。メタネタが成立するシーハルクでやればこそ。しかもブロンスキーが本当はどうなのか、信用できる語り部なのかを孕む法廷劇、こりゃ面白い。

3話
キャプマの時から有害なファンダムに毒されてきた流れを作中でやっと揶揄する事が出来たというだけでも価値がある。VFXの浮きっぷりが凄いのが残念だが、タイトな尺と脚本がとにかく面白い。アボミネーションで1シーズンかと思いきや、まさかの1時間で仮釈放達成。まあ今後のMCUで一悶着ありそうだが、この卒ないテンポ感が最高ですね。


4話
完全独立話として面白い。前半は面白味に欠けたが(VFXも目を当てられなかったが)シーハルク本格戦闘VSゴブリンとシー・ハルクマッチングデートがはまる後半がいい。クソ男列伝の中で良さげだった男が「シーハルクに惚れてるから」やんわり去っていくのが「いやぁクソ男…とも言い難いよなぁ」なヤリチンバランスで良かったです。

5話
コテコテのコメディ演出だが、内容は中々に切実。女性だからこそ、と言う内容を痛感する。スーパーパワーを持っていても無意識なマウントを取る男たち。コスチュームゲットにデアデビルを匂わせるヒーロー物としての側面と、自分ではなくシー・ハルクを求められる否定の側面。まあ、全部込みで自分です!というありがちなオチにいくのだろうか。それでも問題はないが。

6話
クソみたいな学生時代の友達の結婚式に出るエピソード。世界中同じなんだな、いけてない学生時代を過ごしたインキャの物語への没入感は。クソだと分かっていながら「自分は今成功したんだ」と証明したい感情も共感しかできない。ついでに因縁の相手をボコして、戦闘描写も入れて。ミソジニスト描写の生々しさが一級品だ。遂に現れたハンサムガイ、ハンサムすぎて(しかもアジア人だし)ハンドの者か!?

7話
やっぱりクソ男やんけオチ。テロップ芸に場面展開のカット繋ぎに、本当に上質な作品だなぁ。まさかのアボミネーションがここまで別種の美味しいキャラになるとは。有害な男らしさの解毒と同じ様に、心の内を他者に話す事で、シーズンで重ねてきた「自分ではなくシー・ハルクを求めてる」という悩みに向き合う。はみ出し者達だからこそ分かち合える悩みもある。名エピソードだ。

8話
デアデビル登場を軽快に。ネトフリ版からの続投だが、あくまで軽く、より超人的に。今のMCU基準で。クソ男ばかりの末にヒーロー同士のカップルかぁとは思うが、まあ超人の悩みは超人にしか理解出来ませんよね。知的カップルで見ていて楽しい、フェリス的第4の壁破壊で終わるかと思いきや、リベンジポルノ、セレブのプライベート流出まで踏み込む社会批判性。「ハルク=怒り」が顕著に出たのがこの仕打ちとは、やるせ無い。フェリスを超えてバチバチに演出がハマる「視聴者を見るジェニファーの曇った表情」が素晴らしい。「これだから女はヒステリックを起こすんだ」と言うミソジニストの常套句を完封するラストに期待。

9話
いや、ぶっ飛んでんな…。「コミックを映画に」がエンドゲームで終わり「コミックの文法をそのまま映画に」が突き進んだMCU、遂にデップーを越える「第4の壁破壊」構築まで辿り着いた。これでいいのか…?と思いつつ(描くテーマや前話のオチが重かったからこそ)シー・ハルクらしい最高の着地にも思える。なんで女主人公を深刻に描かなきゃいけないの?という意思表示にも思えるし、MCUの長い歴史ゆえの暴挙、イジリにも思えるし、とにかくすごい作品である事には違いない。エミルの顛末を見るに、ハルクの諸々も間に受けないといけない臭いな…。ドラマ版ハルク弄りが霞んでしまった。凄い…。
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