モモモ

マインドハンター シーズン2のモモモのレビュー・感想・評価

マインドハンター シーズン2(2018年製作のドラマ)
4.1
1話(9/18)
S1から直結で。上長が変わり、組織は肥大化へ。融通が効くようで、理解もしてくれているようだが、狡猾さが見え隠れする上司。組織物、サラリーマン物、社会人物としての第一話。能力は買っているが、それはそれとして…という絶妙な距離感の相棒と博士。パニック発作という大きな枷が最初に爆発したのは上司からのガチ詰めだった。絶妙の空気を読めず、演説に浸ってしまい姿はS1の警察署でも見たが今回は共感性羞恥がほと走る。博士を頼り正直に話すフォード、話を真摯に聞きながら女性を目で追う(正直に話していない)博士とのバーのシーンが最高。

2話(9/19)
シリーズ屈指の名シーンを観た。生存者の男。犠牲者の弟。事件の後遺症から過敏になり常に恐怖が付き纏う。フォーカスは男に合わず、常にピンボケ。だが、その怯える声から、ボンヤリと写る表情から、緊迫感と無力感と恐怖は伝わる。会話劇で凄惨なシーンはないのにただただ恐ろしい。凄まじいぜ!フィンチャー!博士はバーで新たな出会い、殺人鬼の嘘を暴き自信を取り戻す主人公、ひっそりと子守に奮闘する相棒。相棒の妻の周りで起きた殺人。鍵の閉め忘れの緊張感。安心できる瞬間など、ただの1度もない。

3話
シリーズの中では長尺の回で、話の根幹も進まないのに、あっという間に終わってしまう。近隣で起きた赤ちゃん殺人。一人で行く事になった殺人鬼との対面では今までとは違うタイプ。ここに来て「分類できない」または「分類が足りない」との見解。向かった地アトランタに根付くのは貧困と差別と対立。白か黒ではない灰色の世界がどこまでも続いている。性的衝動、マザコンだけでは分類できない。ユニフォーム、軍人、学生、そして赤ちゃん。分類と知見の道のりは険しい。博士の恋路に乾杯。口説くなら直球勝負で。

4話(9/21)
これまた最悪のエピソード。S2が本格的に動き出した。本音を出せる事、本当の自分でいる事。新しい恋人に触発された教授は「はじめての面会」で自分を赤裸々に出すが、部下はそれを作り話だと捉える。受け入れたのは犯罪者の(多分同性愛者の)男。本当の自分とは何か、本音を受け入れてくれる場所とは何か。そんな場所が自分の居場所なのか。政治により被害者達の声はかき消され、本格始動かと思いきや出鼻を挫かれる。そして明らかになる赤ちゃん殺しの犯人。あの教会での「混ざってこい」が父の仕事を垣間見た経験が、息子の何かを形成してしまったのだろうか。殺人鬼は環境が生み出す。

5話(9/22)
満を持してのマンソン登場回は「base on true」故の主人公の内面を描く手法に。赤子殺しの場にいて「提案」と言う「殺人への間接的接触」をした息子に「マンソン事件」を重ねてしまうビル。導いたお前が悪だ、お前がいなければそんな事は起きなかった。そんな願望を実行犯と科学的根拠がくじく。元々抱いていた怒りをマンソンが殺人へと導いた。罪は自分のものである。では息子はどうなのか。余裕のないビル、相変わらず社交性の欠片もないホールデン、ビルと「大人同士」で打ち解ける博士。自分を口説くものへの、献上するものへの嫌悪感。ミソジニーでホモソーシャル。殺人鬼の世界。

6話(9/25)
少年たちの誘拐殺人に本格参戦。しかしジムが悩むのは我が子の問題。幼い頃からの邪悪、目を見ればわかる。何も言わないジムが脳裏に描いたのは対面してきた犯罪者達か、愛する我が子か。幼児退行し、女の子を無言で見つめる。我が子はどこまで「赤ちゃんを殺した」事を理解していたのか。接待が得意で社交性があるが家庭で不和が起きている。シーズン2は間違いなくホールデンではなくジムが主人公。心理学検知から事件は一歩前進に見えるが…マスコミ…市長…地元警察…邪魔なのはいつも政治だ。

7話
シーズンフィナーレに向けてまたヒリヒリしてきました…。現場で働きたいのに制限される博士は恋人との駆け引きも失敗。ビルの二重、三重生活は誰から観ても過重状態で。妻は犠牲者の母からの赦しで「加害者」である事実を受け止めざるを得ない。児童連続殺人に対して市長、捜査本部、市民、犠牲者の会で連携が取れず。規定と社会性、組織内での政治でかんじがらめ。ホールデンのイライラは真っ当だが、みんなそれぞれ手一杯。白人が必死に運ぶ十字架、犠牲者の母からの痛烈で無情な視線。この先に解決はあるのか。

8話
お、ラスト2話なのにフィンチャー監督回じゃない。思えばシーズン1から趣向が変わって、王道の捜査物になってる。面会と仲間内での会議による会話劇物としての面白さはシーズン1の専売特許だったのか。まあ応用しないと意味がないからFBI操作物になるのは当たり前か。とにかく手続きが面倒、連携が取れない、理解が得られない。お役所仕事批判作品。もう意味ないわ!俺がなんかする意味なくない!?とのホールデンの幼い自暴自棄も納得はできる。ジムは息子と僅かに歩み寄るが、妻とは亀裂が深くなる。謝罪が加害者である事実を明確にし、遂には加害者の母である現実を拒絶するまでに。無情だ。事件を通して「子供に罪はない、彼らは必死」だと説くジムの姿に涙がでる。博士の淡い恋には終止符が。遂に掴んだ(かもしれない)犯人の尻尾。またもや徒労に終わるか否か。

9話(9/28)
シーズン1の始まりが敗北で、シーズン2の終わりが敗北で。シーズン3は事実上キャンセルされた本シリーズにとって、実にほろ苦い最終話。遂に捕えた犯人。矛盾した証言、新人警官の不手際で取り逃した証拠。大体な行動に出続ける男。プロファイルに固執するホールデン。視聴者とホールデンは直感で「この男が犯人だ」と確信を得るが、遺族は納得しない。そこには人種差別の歴史がある。犯人逮捕に固執していたのはホールデンでけだったのか。否、違う。署内にも「関連している犯人がまだいる」との気づきを得た者がいた。それでも事態は動かない。実績を得たFBIは満足し、これ以上の騒動を避けたい市長達は終止符を打つ。全てが解けないままでの幕切れ。本当に奴が全ての少年を手にかけたのか。本当は何が起こっていたのか。組織という政治の中で翻弄される愚直なホールデンには何もできない。家庭と仕事の板挟みの中で足掻いたジムは片方を失い。勝者なきまま物語の幕は閉じる。
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