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静かなる海のyamadakabaのネタバレレビュー・内容・結末

静かなる海(2021年製作のドラマ)
1.0

このレビューはネタバレを含みます

月面基地で起こる原因不明の死と謎の少女、さらに政府の思惑が見え隠れ。
月を舞台にしたSFサスペンススリラー。

タイトルの「静かなる海」は、月の別称。

地球の水が枯渇し、等級ごとに量が決められている配給によってなんとか人々は生きている時代。
月の基地に派遣される宇宙生物学者ソン・ジアン(ぺ・ドゥナ)の一行。
宇宙船の危機故障で、着陸に失敗。生命維持装置の電力や酸素が切れる
ギリギリで宇宙基地に辿り着くが、そこは事前い聞いていたような
放射能汚染された基地ではなかった。
クルーたちは、宇宙基地が閉鎖された原因が月の水の研究によるものだと知る。
月の水は、浴びてしまうと人間の血によって感染し、増殖。
普通の人間は溺死してしまうものだった。かつての事故は、月の水の感染から
逃れるために人体実験をしている最中に起きた人為的な事故だった。人体実験の生き残りLUNA。
政府は事故の真相を隠蔽。月の水とLUNAを独り占めしようと目論んでいたのだった。LUNAを救い脱出を試みる一行だったが...


スケールの大きい設定と大掛かりなセットは見応えがあるが、ストーリーの進行が遅く、各話ごとのクライマックスの盛り上がりも小さい。
登場するキャラクターは多いが、それぞれにドラマがあるわけでもないので、メインストーリーとサブストーリーの作り方がうまくいっていないのが原因だろう。

監督をしたチェ・ハンヨン監督の短編映画が原作とのことだそうだけれど、
短編の時に描かれなかった部分を補強することができてない感じ。

サスペンスとしては、月の水という死に至らしめる水が出てくるが、それによって、誰が死んで誰が生き残るのか?いつ死んでしまうのか?という
ハラハラドキドキの緊張感が作り出せる設定ではあるが、主人公を含めて、危険と隣り合わせというシーンや事件も少ないから、そこももう一つな感じ。

物語としては、政府高官は真相を知っていて、クルーの中にはスパイ役もいるあたりは定番な設定。

宇宙基地のシーンはよくできているけれど、状況設定として不自然なシーンもちらほら。最初にクルーが殺された貯蔵庫では、その時にはまだ判明していなかった得体の知れないものに殺されたことがわかっているのに、時間をかけて死体を確認していたり、ウィルス感染による死が疑われる状況の中で、素手でいろいろなところに触りまくったり、謎の植物が生い茂るスペースを発見した後、どんな危険があるのかわからないのに、ヘルメットや防護服も着ずに、全員で踏み込んだり、と生き残ろうとするならそんなことするかなあという部分がちらほら。
最後に、生き残った主人公が追い詰められる大量の水も、なんであの時だけ、基地から溢れるくらいの水が出たのだろう。元となる隊員が死んでしまったのに。大量の植物が絡んだことによって、水の増殖が止まらなくなったのかなあ。

冒頭の宇宙船墜落もいるのかな?真相を知っている人物が、一人早々に死ぬことになるきっかけではあるのだけど、墜落自体は月の水や、基地で起きたかつての事故とはあんまり関係もないようなただの事故だと思うのだけど。

月面に宇宙服も着用せずに歩き回るLUNAは、一体どういう適応の仕方をしたことになるのだろう?

ラストは、生存者として救出されるぺ・ドゥナ。
たぶん彼女の体内で生成されたと思われる免疫を使って、地球でも月の水が使えるように研究が進むのかな、と思わせるところで物語はそこで終わる。

月の水という、人間を死に至らしめる可能性もあるが、希望の光かも知れないものをどう扱うか?怖いのは、そう言った未知の物質ではなく、それを欲に任せて独り占めしようとする人間だった。という、現実の地球でも起こりうる(現実に起こっている?)資源を巡る争いに対するメッセージを感じることができるかもしれないが、それもそこまで前面に出してきてるわけでもないし、そもそもそんなにセンセーショナルではないか...そんな感じのドラマだった。
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