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梨泰院クラスのyamadakabaのネタバレレビュー・内容・結末

梨泰院クラス(2020年製作のドラマ)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

高校退学・前科者、唯一の肉親の喪失と、自分の人生における全てを失った男の不屈の復讐劇。

自らの信念が招いた父の事故死。その裏にある権力者たちの義を欠いた行為。半沢直樹的勧善懲悪のキャラクター設定で、15年に渡る復讐を描いた物語ではあるが、ずっと復讐を企ててるかというと、そうではない。ふたりの女性との三角関係を描いたラブコメ要素、店を構え、仲間達と困難を乗り越えていくワンピース的青春モノ、巨大企業に挑む成り上がりモノなどなど、面白そうな要素がふんだんに詰め込まれた幕の内弁当的ドラマになっている。
話のテンポはよいけれど、復讐だけではないので、物語全体の進行はそんなに早くはない。

魅力的なのは要素てんこ盛りのストーリーだけではなく、出てくるキャラクターも個性的でおもしろい。何事も揺るがない男パク・セロイを中心に、天邪鬼全開で自分の気持ちに素直になれない(気づくの遅い?)のオ・スア、自分の心に従順なチョ・イソ、タンバムファミリーの元ヤクザのスンギョクやトランスジェンダーのヒョニ、悪役の長家会長やその息子など、みんなキャラ立ちしている点も、どこかしらに共感しやすい構造になっている。

主人公パク・セロイの、マイペースながらも自分の信念を貫き生き方とその言動は、真似したくなる気持ちにさせる。オ・スアの煮え切らない態度は、自分の中にもきっと少しはあるだろうし、チョ・イソの歯に衣着せぬ物言いに憧れやすい。

「幸せは復讐をした後だ」パク・セロイが、そう語るシーンがある。すべてを失った後もう一度立ち上がるために必要だったのは、父親を死に追いやった仇である巨大企業の長家の会長親子への復讐心。
結局は、バカ息子の間違った反社会的行動と会社の不正によって自滅。企業買収することで長家を崩壊させ、同時に罪を認めさせるという目的も果たす。夢にまで見た瞬間、にもかかわらず、物足りなさを感じるパク・セロイ。復讐の先に幸せがくればいい、そんな順序が必要だと思っていた彼にとって、成し遂げた復讐は味気なかった。

復讐の先になにが待ち受けてるか?そんなスタートだった物語は、復讐が何かをうむわけではない、ましてや幸せの前段階ではない。
そんなメッセージがあるんだと思った。

心に残るシーンもたくさん。
・酔った勢いでセロイとキスしようとするスアの顔を鷲掴みにしたイソの「ディフェーンス」
・イ・ホンギと面会し、アクリル板越しに拳を合わせ共闘を誓うセロイとホンギ
・料理初心者だったヒョニに通常の2倍の給料を渡して、2倍頑張れと励ますセロイ
・「自分の価値を自分で下げるようなことをするな勝手に価値を決めるな」と1話目で言われた言葉を15話目でヤクザに向けて言い放つスンギョク。
・タンバム新店舗屋上からの夜景が綺麗

変わらない・揺るがないセロイのキャラクターをまったく変わらない髪型にしてることで表現してるのも、おもしろい。15年経っている設定なんで、他のキャラクターは時間が経過するごとにロングヘアになったり、分け方が変わったりするのだけど、セロイだけは変わらない。服装は変われど、変わらない。会長とカン専務も変わらない。

最初考えていたグンウォンの時効までかけた15年計画だったり、スアを長家から解放するだったり、うまく回収できてない部分もあったけど、復讐メインの恋愛青春成り上がり物語は、楽しく見れた。そんなドラマだった。
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