yamadakaba

MANIFEST/マニフェスト シーズン4のyamadakabaのネタバレレビュー・内容・結末

3.0

このレビューはネタバレを含みます

とある飛行機に乗り合わせた乗客に起こった、不可解で奇跡のような物語。

普通であれば、見ず知らずのまま終わるただ同じ飛行機に乗り合わせただけの乗客。そんな赤の他人であったとしても、すべてはどこかでなにかしらでつながっていて、そのつながりをどう捉えるかで人生が一変する。そして、望ましい人生に変化させたいのであれば、許容することが、自分の心も相手の心も軽くさせる大切な心持ちであることを、喪失をテーマにメッセージしてくれている、そんなドラマだった。

シーズン1-1の空港のミカエラの語りから始まり、シーズン4-20で空港を去るミカエラのまとめで終わる、ブックエンド方式。出会いと別れがある空港ならではのテーマな感じも、見終わってから思う。

ミカエラは、ドラマ冒頭ではイビーの死に対する責任や、それをもとに幸せになることへの背徳感などが心を覆っている。ベンはカルの病気や、実はオリーブが構ってもらえていないという問題も抱えている。他の乗客も人生に対しての問題を感じている。828便に乗ったことで、呼びかけを解いていくことを通じて、個人的な物事も解決していくし、偶然居合わせた自分以外の誰かを助けることも経験していく。最後は世界を滅亡から救うレベルまで、問題は大きくなる。自分の生死だけではなく、世界の存亡を抱えて生き抜いていく、そんな経験をした乗客はみんな、かけがえのない人生を生きていたことに気づく。元の世界に戻った時、その気持ちは報われる。人は失うことで本当に大切なことに気づくことが多い。5年半の時間を失っただけではなく、愛する人や大切な家族との絆も断ち切られてしまった828便の乗客たちは、そんないま手にしているもののかけがえのなさを痛感する。いまこの瞬間に手にしているものがなくなったら、そんなことに思考を巡らせられる物語だった。

828便の乗客同士は、一緒に呼びかけを解決していった思い出を共有しているが、乗客ではないバンスやジークにはベンやミカエラと出会った記憶すらない。彼らとの冒険をずっと見守ってきた視聴者としては、ベンに気づくこともなく捜査に向かっていくバンスや突然タクシーの助手席に乗り込んできたミカエラのことを全く知らないジークの姿を見て、少し寂しい思いも。こういったことも、取り戻せるものがあれば、失うものがある。そんな喪失の一面を描いているようにも思える。全てにおいて丸くいくなんてことは、人生ではあり得ないのだ。

なぜ828便だったのか?なぜ呼びかけが起こるのか?なぜ乗客ではないジークや、悪者3人組もタイムスリップしていたのか?どんな基準で裁きを受けた人と受けない人がいたのか?とか、答えが明示されていない設定もありますが、現実の世の中だって科学で説明できないことがある。SFドラマだって、説明できない出来事があったっていい(と思うしかない)
いろんな手がかりをもとに、謎解きの要素があるから、続きを見たくなってしまうという仕掛けがあったりするので、解決されないのはどうなんだろうとも思うけれど。

記憶は失っているけれど、最後に少年に戻ったカルも帰ってこれてよかった。MANIFESTは、そんな喪失についての物語だったように思う。
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