yamadakaba

その年、私たちはのyamadakabaのネタバレレビュー・内容・結末

その年、私たちは(2021年製作のドラマ)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

自分の人生と向き合うことを描いた物語。

高校で学年一の秀才とビリの学生が一緒に出演するドキュメンタリー番組に出演したヨンスとウン。真逆のふたりはいつしか惹かれあい、付き合うことになるが、ヨンスが一方的に別れを告げ疎遠に。5年後に再会したふたりが繰り広げる恋愛ドラマ。

ドラマ序盤は、性格や立場も異なる二人が出会う、ボーイミーツガールの典型的な始まり。再会し、お互いの距離感を掴めないまま、自分の気持ちもわからずぶつかり合う様子はドタバタな恋愛コメディ。見ている側はムズムズともどかしく、楽しめる。

大人になり、自分の気持ちと向かい合えるようになってからは、恋愛要素もありながら、やっと迎えたふたりの幸せな日常のドキュメンタリーを見させられているよう。大きな事件が起きるわけでもないが、まったく気にならないわけでもない。高校時代に出会った二人が成長し、再び交際するようすを微笑ましく見ることができる。

最後は、そんな二人の様子を通して、「自分の人生を歩く」というテーマに触れていく。実の息子ではなかったことで、本当の息子でいるように借り物の人生を歩んできたと感じているウンや、自らのせいではないのに手に負えない貧乏を背負い、それを足枷に感じ、ウンとの別れを選び、祖母とふたりだけで生きていると感じるヨンスや、母の優しさを感じることなく育てられ、自分の存在意義に疑問を持ち、母の死を目前にしてその親子関係と向かい合うことになるジウンなど、みんな自分の人生を歩んでない様子がはっきりと示され、そんな状態にどう折り合いをつけるかが描かれていく。
回想シーンでたくさん描かれることで、子供の頃から知っている(気にさせられる)ウンやジウンやヨンスが、人としてどう成長したのか、を視聴者は丁寧に感じ取ることができる。親心みたいなものを感じることができる。

劇中のモチーフとしてドキュメンタリーは使用されているが、作品全体として、ドキュメンタリーな感じを出すことで、だれかの人生に共感できる作りになっているように思う。

各話のタイトルが映画のタイトルになっていたり、現実の時間軸のシーンはシネスコサイズ、回想シーンは16:9サイズ(シネスコで回想するときは点滅していたり)になっていたりする演出も、映画と現実、物語とドキュメントの間を行き来しているような不思議な感覚を体験させる、そんなドラマだった。
yamadakaba

yamadakaba