真田ピロシキ

THIS IS US/ディス・イズ・アス 36歳、これからの真田ピロシキのレビュー・感想・評価

2.9
複数の線が一本に繋がるEP1を見た時は傑作を予感した。その仕掛けがなくても人生の転換期にいる人達の物語として優れていると思っていて。途中で引き伸ばしてばっかりのアメリカ産映像コンテンツへの嫌気が最高潮に達した。

様々なしがらみから脱して自分を変えようとする。それ自体はとても良いのです。だけどあまりに頻繁に変えようとされると「どうせそれもすぐ放り投げるんでしょ?」としか思えなくなる。ケイトは序盤だけで2回思いつきのような就職をしてはすぐ辞めてダイエット合宿に行っても辞めて終いには歌手になると言われてもはーそうですかとしか。双子の兄ケヴィンはもっと酷い。低俗なドラマの主役にブチ切れて生放送中に降板し高尚な舞台劇に活路を見出そうとしました。客寄せ目的で採用されたのに共演女優と寝て脚本家とも寝て舞台は空中崩壊。三角関係の結末は何と自分の浮気が原因で別れた元妻と元サヤ。新しい芝居の初日はパニック発作を起こした義弟ランダルの元に行ってスッポかし。有名批評家が招待に応じなかったことをボヤかれても来る訳ねーだろと。事情を知らないのにどうしてお前のことを信用出来ると思うんです?最後はロン・ハワードからお呼びがかかって復縁した妻とも離れてLAにカムバーック。所詮舞台はキャリアの箔付としか思ってなかったんですね。勝手にやってろ。両親が本当にやりたいことには痛みを伴っているのに対してこの実子兄妹は都合が良すぎる。他人を自分の人生の召使いに出来るのならそりゃ楽しいでしょうよ。

人生は平坦な道のりではないですが山と谷ばかりでもない。このドラマは18話もあってその中に隙間なく話を詰め込もうとするから段々と嘘臭くなってくる。しかもこれがまだまだ続くという…この上に話を無理矢理付け加えられるかと思うととても耐えられない。これがランダル辺りを主人公にした2時間半の映画だったならきっと感動していた。ランダルが夢の中で養父と実父の会話を見るシーンなんかドラマに冷めていても泣きそうだったからね。もったいない。どんな高等な振りをされても起承転結の結を描かず転を繰り返す話などくだらないとしか思わない。アメリカのクリエイターは受け手のことをルアーに群がる魚とでも思っていないか。私の物語はそんな物を黙って消費し続けるほど安いものではないと言いたいです。