モモモ

ザ・ボーイズ シーズン3のモモモのレビュー・感想・評価

ザ・ボーイズ シーズン3(2022年製作のドラマ)
4.5
1話6/5
疲れた。S2が頭いきなり吹き飛ばし祭りだったので、鑑賞中に身構えてしまって、非常に疲れた。撮影の水準が上がってきた事を感じるS3。当たり前だが続けば続くほどクオリティも予算も上がるのだ。
冒頭からスナイダーズカット弄り「本家MCUにも出たばっかりのシャーリズ」で幕を開け、サノスのケツにアントマンが入ればネタを拾い、あとは不安定なホームランダーと、不安定なブッチャーを描く。妻の死で小休止になるはずもなく、望むのは互いの死。え!?ペイバックさんは解散でソルジャーボーイは故人なの!?と不意をつかれたが、あの様子だと多分生きてるのでは…。四肢がほぼないナチス女に手コキをさせるの、マザコン拗らせてる所の騒ぎじゃ無い。とにかく今後が楽しみな種まきに終始した第1話。楽しみでい

2話
6/11
いやぁ、すごい。1話のお膳立てを速攻回収。ブッチャーの暴走、ホームランダーの暴走。GOTのティリオンの演説に匹敵する長回し演説。ただし、こちらは独りよがりで、被害者意識だけ強い、特権階級の白人男性だが。引っ張るのかなと思っていた展開、頭ブッ放し女の正体と思惑、ブッチャーの能力覚醒と戦闘なんかを早々を済ませるので展開が非常にハイテンポ。
自殺を強要するシークエンスの居心地の悪さよ。この話で初登場のヒーローを消化して。ソルジャーボーイがなかなか出てこない展開に驚きつつ。役者の底力を知れる名エピソード。

3話
6/12
自身の願いを子に投影するキッズ・アイドルへの風刺が、再度の屈辱に苛まれるラストに集約するとは。胸糞が悪いの何の。しかし3話の折り返し地点(全エピソードが何話か把握していないが)なので、一旦ここでフラストレーションを貯めようと言う事なのだろうか。ブッチャーの不調とライアンとの不和、遂に登場するソルジャーボーイはチーム毎底なしの間抜け共で。キャプテンアメリカオマージュの振りをしたウィンターソルジャーオマージュ…の振りをしたなにかに違いない。個人的には現在のブラックノワールの中身がソルジャーボーイな気がするのだが。そうなると、まんま「ゲット・アウト」だから無理があるか。トランプを投影したキャラクターで史上最高峰なのがホームランダー。

4話
6/14
「こうなるんだろう」と言う予想を良い意味で裏切っていく展開が面白い。エドガーの失脚、女性陣の暗躍と粛清、そしてホームランダーの暴走とヒューイの暴走。S2までで築いた物が崩れ去っていくのがたまらない。バランサーであったヒューイが傾いたのが1番大きいかもしれない。ソルジャーボーイも想像の上を行く役割を担いそうだ。キャプテン&バッキーに、対能力者ビームまで。これがホームランダーと手を組んで大惨事になる未来しか見えないが、可能ならVSでホームランダー初めての接戦を見てみたい。ヒロイズムに溢れる様な演出だが、やっている事が完全にS1のホームランダーに被るブッチャーが切ない。

5話
6/18
一線を超えてしまう5話。バランサーであったヒューイがこうなってしまうと、スターライトが死ぬ未来しか見えない。もしくはヒューイ自身の死か。上手くいく様な伏線が悉く潰えていくので気分が沈む。それが良いのだが。まるで無能なホームランダー&ディープ。6話が悲惨らしいが、まあ、そういう展開になるのだろう。トランプへの風刺として過去最高になるのでは。BLMに反対していた者たちへの「黒人の友達がいる」「みんな生きている」とは、こんなに醜いんだぜ?も強烈。「お前を愛してたのに」「最初から嫌いだった」が示す様にホームランダーとソルジャーボーイは鏡写しどころか同じ存在にすぎない。毒を持って毒を制すのか、毒を増やしただけなのか。MCU、DC弄りは滑っている様にしか思えないが「What ever it takes. 」の引用だけは最高で、皮肉で、やるせ無い。

6話
28日
地獄だ…。ヒーローガズムの実写版はこんなもんかぁ…第1話のチンコ爆発の方が下世話だな…とは思ったが。一線を越えていく人物は増えていくのが本当に地獄。ヒューイ、ブッチャーは元より、スターライトも「もう戻れない」場所に来てしまった。自分勝手には変わりないが初めて心からの謝罪をした憎き仇も、あんな事をしては(そもそもマジで死んだ疑惑さえ)もう戻る事は出来ない。グリーンゴブリンオマージュで見せるホームランダーの二面性。「愛されたい」との渇望が一線を引いていたが、いよいよそれが無くなってしまえば世界は地獄絵図。
一線を越えなかったMM、人はより良い世界に戻れると示すフレンチーが救いか。
力ではなく「最初からクソ野郎」で、それをVが助長するだけ、とのブッチャーの解釈がより強くなる6話。誰もかれも救われる事はないのだろうか。
「俺は悪人ではない」と言いながら虐殺を繰り返すソルジャーボーイ。根っからの悪人は存在せず、根っからのゴミクズしかいない、そんな所だろうか。

7/2
7話
凄い、地獄、ただただ地獄。「有害な男らしさ」に毒された者たちで語る「家父長制」の限界。自分が恐れている事を認める事が出来ないホームランダー、PTSDである事を認める事が出来ないソルジャーボーイ、自分が父親と同じ病理を抱えている事が直視出来ないブッチャー、自分がマッチョ思考に毒されている事にさえ気づいていないヒューイ。カウンターに思えたMMも「娘の前で」父親らしく、男らしく振る舞ってしまう遣る瀬無さ。男である限り、誰もが対象なのだ。シーズン2でナチス×ホームランダーの最悪チームアップを成し遂げた製作陣が、「男らしさ」に囚われたセクシストでレイシストな独りよがり「家父長」チームアップを成すなんて、最悪を更新し続ける見事な姿勢だ。
この流れはやはり…メイブも…そしてライアンの参戦も避けられないのだろうか…怖いぜシーズン4、5…。
「カナリア」に戻る片鱗、「一線を越えさせいる」という製作側の自覚、強い意志。どうかヒューイだけは、ヒューイのままで、己の「男らしさへの憧れ」に負けないでくれ。
改心を見せた先での「逆ゲットアウト」を施された無情なAトレインはどこに向かうのか…そして解放されようと足掻く(無能な)ディープ、「強くて、自分が1番でないとダメな白人」に戦傷を負わされて心と身体を病んでいるノワールは最終決戦で何を見せるのか。
ブッチャーの内側に迫りつつ、最悪を更新し続ける最強の名エピソード。

8話
7/9
6、7話の名エピソードには敵わなかったが、多くの登場人物の変化と選択の結果を描き一旦幕を閉じる露悪シビルウォーな最終話。どうなるんだ…?とのサスペンスを成立させながら「化石ホモソーシャル野郎」としての面目を保つソルジャーボーイの「有害な男」として「父親」描写が最悪で最高。有害さは伝染し、俺はよりよい父になる!という願いは決して叶わない。環境は人を変えて、変わった人間は中々戻る事が出来ない。カエルの子はカエル、を体現するホームランダーとソルジャーボーイ、そしてそれが更に波及し、受け継がれてしまうラストショットの胸糞の悪さ。ここまで「有害な男」の根深さを描いたドラマは、本当に初めて観たかもしれない。親子3代の歪さ、より良い父、より良い兄になりたいと願ってもそれが出来ないブッチャーの「ライアンを思うが故」にとった強固な態度が跳ね返ってくる様が痛々しい。
一矢報いて、その上で「子供を救う為」に、己の憎しみを、使命を投げ打つメイブこそ「ヒーロー」なのだろう。だからこそ彼女は生き残り、人生を得る。本シリーズ初に本当のヒーローが生まれた瞬間だ。
ブッチャーの寿命、極まるホームランダーの「トランプ化」と助長する民衆、微かに芽生える悪人達の良心と、崩壊したセブン、そしてソルジャーボーイと言う秘密兵器はアメリカの物に。結末は近い。最高のシリーズをありがとう。
モモモ

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