mimitakoyaki

マイ・ディア・ミスター ~私のおじさん~のmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

4.2
韓国ドラマのラブコメが続いてたので、恋愛じゃないドラマを見てみましたが、こちらもとても良かったです。
あ、この作品のイメージ画像がキラキラでラブコメっぽい感じですけど、全然そんなんちゃいます。まるで作品の中味とかお構いなしの悪意を感じるくらいの酷さです。
日本の会社は韓国映画をキラキラとか変なフォントとかでラブコメ風にするのほんとにやめて欲しいです。
もっと暗い話なんですよ。

妻が自分の会社の社長と不倫してて、社長に罠を仕掛けられて陰謀に巻き込まれるドンフンと、その陰謀に関わる若い派遣社員のジアンとの関係を軸に、ドンフンの親兄弟、友人、会社の部下たちとの絆もかなりの熱量で描かれています。

もう、うまくいかない事だらけで、人生に疲れた人たちばかりが出てくるんです。
ドンフンは世渡り下手で憂き目にあってるし、兄弟は仕事も続かず貧しくて酒浸り、ジアンもあまりに辛くて壮絶な過去を背負っています。

そんな惨めで哀れな人たちが、自分も大変なのに、誰かのことを思って世話焼いて心配して、お節介で暑苦しいくらいの濃ゆい絆の中で、どこかしら傷が癒されていったり、前を向いていこうとするのがあたたかいのです。

やはりドンフンがね、ぶっきらぼうですがほんとに優しくて、ジアンに対する誠実さはジアンじゃなくでも誰でも惚れてまうやつです。
大学時代の後輩である社長と浮気してた妻に対しても、心の中はぐちゃぐちゃなのに、妻や周りを傷つけないように思いやったり…

誰かのために優しさを与え、時には自分を犠牲にしたりしてた事が、人を癒し勇気づけ、その優しさが繋がって、また自分にも返ってくる、人の温もりを感じさせてくれるドラマでした。

全体的には暗くて静かなトーンですが、社長の陰謀はサスペンスとしておもしろいし、はじめはお金目当てで陰謀に関わってたジアンが、ドンフンの事を知れば知るほど惹かれていくんだけど、恋愛でも友情でもないドンフンとジアンの関係の変化もすごく良かったです。

はじめウザいくらいだった街の人たちも人情味があってあったかいし、兄弟や母親との絆の強さもすごいんですけど、さすがにしょっちゅう兄弟と会って地元で飲んで帰ってくるのは、それは妻は寂しくなりますよね。
あれはたび重なったら離婚の要因になります。
ドンフンはすごく良い人で大好きですが、そこだけは程々にして欲しいと思いました。
街の人たちも、仲間との絆はすごいけど、毎晩飲み屋に行かずに家で家族とご飯食べろや!って声を大にして言いたかったです。

ドンフンはパラサイトの金持ちパク社長を演じたイソンギュン。
この人のええ声が堪能できます。
あんなに生きることに絶望して暗い人なのに、誰に対しても親切なところがほんとに魅力的でした。

そしてジアンを演じたアイユがまためちゃくちゃ暗いんですよ。
ノーメイク、服装も地味で、華やかさのかけらもないし、にこりともせずに殻を閉じこもって淡々と無感情に生きてる彼女が、おばあちゃんに見せる愛情や、ドンフンに対して芽生えた感情や、時々堪えきれなくて見せる涙とか、とても心打たれました。

あと、クズ社長は「愛の不時着」の愛すべき耳野郎!
今回もある意味耳野郎でしたけど、愛の不時着の時のオドオドした感じとは全然雰囲気も違い、若手社長らしくパリッとしてお洒落、なかなかの顔立ち、でも背が低めでドンフンや彼の妻に見下ろされる感じとか絶妙でした。

あと、愛の不時着のリジョンヒョクのお父さんも会社の幹部で出てたし、梨泰院クラスのスア役のクォンナラも印象的な役で出ていました。

イソンギュンがサッカーやるとこと、作業着で現場で技師の仕事やってるとこめっちゃ萌えでした♡
とても良いドラマでした。

9

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2回目: 2022.7.22

先日「ベイビーブローカー」を見て、是枝監督がこの作品を見てIUに惹かれたと言ってたし、養護施設長役でソンセビョクや、子どもを買おうとする夫婦の夫役でパクヘジュンが出てたこともあり、2年ぶりにまた見たくなったのですが、やっぱり名作と言われるだけあって、ほんとに人生の苦さも、人の温かさも丁寧に描かれていて、それぞれが辛いものを抱えながらも、さまざまな葛藤を経て、再生する物語にとても感動しました。

そして、「ベイビーブローカー」を見た後だからこその発見もありました。
最終回で、ドンフンの弟ギフン役のソンセビョクが、是枝監督の作品である「誰も知らない」を見たという話をするシーンがあり、「親に捨てられて置き去りにされた子ども達が気の毒過ぎて5分と見てられなかった。俺があの子達をみんな引き取って面倒見てやりたかった」って言うんですね。

是枝監督はこのドラマが好きで見ていたという事なので、自分の作品についての言及があった事に感激したと思うんですね。
だから「ベイビーブローカー」では、身寄りのない子ども達を育てる養護施設の施設長の役をソンセビョクにあてたのかなと思いました。

あと、このドラマで、「ファイティン」というとてもシンプルなありふれた言葉に込められた思いがとても心に残るのですが、それは「ベイビーブローカー」での「生まれてくれてありがとう」ととても重なって感じられました。

初見の時は、まだ韓国ドラマを見始めたばかりで、映画俳優以外の人はあまり知らなかったのですが、2回目に見たら、パクホサン、コドゥシム、チョンヨンジュ、今は立派に売れっ子になったチャンギヨン、「今、私たちの学校は…」にも出てたアンスンギュン、いろんなドラマで度々お会いするチョンへギュン、最近だと「ナビレラ」や「ペーパーハウス コリア」などでも出てたチョンジェソン、「気象庁の人々」「今、私たちの学校は…」にも出てて顔が特徴的なチェドンヒョン、オナラ、「ペーパーハウス コリア」や「私の解放日誌」「青春の記録」でも印象に残ったパクスヨン、見てるドラマにしょっちゅうチョイ役で出てくるソサンウォン…と、名前知らんけど前も何回も見たわ!というパターンの知ってる人がいっぱいでした。
このドラマが評価されたから、他の作品でもよく見かけるのかもしれませんね。

イソンギュンは、やはり声がほんとに特徴的だから、盗聴してる時の音声だけ流れるシーンが多いし、見事なキャスティングでした。
どの役も本当にそれぞれの魅力があって、脇役に至るまで素晴らしいんですが、ドンフンの兄弟が本当に良かったです。

はじめのうちは、仕事もせずに飲んでばっかりのうだつの上がらない兄が、ほんとに情けなかったんですが、情のあつさと哀愁がとても人間味があって、お兄さんの優しさに何度も心が温まりました。
弟の方も、すぐにカッとなって暴言吐いたりケンカするのが嫌だったんですが、清掃の仕事も一生懸命やり、内に秘めた優しさもあって、辛いけど自分にも向き合おうとするところなんか、とてもかっこ良くて魅力的でした。
そして、ドンフンが最後までほんとに紳士だったのが、めちゃくちゃ良かったです。

2回目見てもとても楽しめ感動もしました。
大好きな作品です。

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