mimitakoyaki

サイコだけど大丈夫のmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

サイコだけど大丈夫(2020年製作のドラマ)
4.2
最終話を見終わった後に、それぞれの新たな1歩に心の中があたたかさで満たされました。

自閉症の兄の世話をすることでしか自分の存在意義を感じられず、母親の愛にも飢えたガンテ、子どもの頃に母親が殺されるところを目撃し、そのトラウマに悩まされ続ける自閉症の兄サンテ、母親からの虐待でサイコパスのように人格が歪んだ孤独な童話作家ムニョンの3人が、それぞれの心に負った深い傷を、互いにぶつかり寄り添いながら癒していく物語です。

サイコなムニョンと関わった人が、荒療治のような感じでそれぞれの心に刺さったトゲを抜いて自らを許し解放していくのが、ドラマなので上手くいってるんですけど、実際のトラウマ治療では「辛い事でも逃げずにずに向き合って」というのができる段階とできない段階があるだろうし、人それぞれなんだろうなと思いながら見てました。

韓国の作品らしく、親子や兄弟の愛憎が濃厚に描かれていて、互いの存在が大きいからこそ家族の呪縛も強いのですが、「自分の人生は、自分は、誰のものでもなく自分のもの」というメッセージがとても心に響き、今までいっぱい苦しんだけど、過去の呪縛から解き放たれ、自分自身の人生を自分の手で拓いて幸せを求める姿にとても感動しました。

キャストも主演の2人はもちろんのこと、脇役もみんな好きになるんです。
他の韓国ドラマ見てても脇役がほんとに魅力的で、ドラマのおもしろさにすごく貢献してると思います。

主人公のガンテを演じたキムスヒョンは、「10人の泥棒たち」は見ましたが正直あまり印象に残ってなくて、それより「愛の不時着」で頭の悪い男のふりをした北の工作員の役でカメオ出演した方がインパクトありました。
あの時の緑ジャージのアホな子が、この作品ではあまり笑わず自分の心を見せない役だったのでギャップに驚き、他の作品ではどんなんだろうと追いかけたくなりました。

ムニョン役のソイェジはスタイル抜群だしめちゃくちゃ綺麗、笑顔がすごく可愛いし、でも声はすごく低くて個性的。
人里離れた城に住む姫で、その姫ファッションが毎回すごいんです。
ウエストがあり得ないほど細くて、この人はお腹に内臓入ってないのかなと心配してしまうくらいです。
どんな服でも見事に着こなし、1日で何回着替えるんやと思うくらい衣装がゴージャスで楽しみでした。
かなりのミニスカートもいっぱい着てましたけど、愛の不時着のユンセリもミニスカート結構はいてて、あれはセレブのファッションなのでしょうか。

そして何と言っても兄のサンテを演じたオジョンセが素晴らしすぎました。
自閉症の人の動作や話し方とか表情とかかなり研究もしたんだと思いますが、演技とは思えないくらい神がかってました。
「椿の花咲く頃」でもとても印象に残りましたが、今作では純真さと繊細さと強さ、弟への深い愛を茶目っ気たっぷりに見せてくれ、何度も泣かされました。
ほんとにすごい役者さんです。

あと、我がままでトラブルメーカーで手のかかるムニョンの孤独を理解し、振り回されながらも仕事のパートナーとして信頼している社長とか、ガンテが唯一笑ったり弱音を吐ける親友のジェス、どっしり構えて受け止めてくれ、美味しいご飯を作ってくれる偽物で本物のお母さんなど、みんな優しくてあったかくて魅力的でした。

ムニョンの作る絵本の世界やムニョンの住むお城、ムニョンの衣装など、美術、映像もとても美しく、ガンテの働く精神病院の場所も最高で、ソウルとは離れた地方を舞台にしてますが、ロケーションもとても良かったです。

本作でも、ガンテがサンテやムニョンのご飯を作る場面が何度もあって、一方でムニョンはご飯を作らないので、若い世代が「ご飯は女が作るもの」というイメージを持たないようなジェンダーに配慮した作りになっているのを感じました。

11
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