むぅ

大河への道のむぅのレビュー・感想・評価

大河への道(2022年製作の映画)
3.5
「お父さんは中井貴一に似てるんだよ」

そう洗脳されて育った。
最近こそ落ちてきたものの、私の視力はかつて2.0以上あった。
そういう問題ではないがその視力をフルに使っても、ミキプルーンを持って微笑む姿やDCカードでカッパとタヌキと楽しそうにしている姿は、何をどう頑張っても父には見えない。
つまり、似ていない。
その答えに自信が持てたのは中学になってからだったので、洗脳というのは恐ろしい。
ただ中井貴一を観ると異様な親近感がわくので、ある意味洗脳は成功したとも言える。
ちなみに父親が娘を洗脳するのを止めるべき立場にあった母親は、父が去ったあと必ず側に寄ってきて否定するのかと思いきや
「お母さんは中井貴一より佐田啓二が好きなの、カッコいいのよ」
と、これまたいらん情報を提供して下さっていた。毎回必ず。
こんなところでまで自分の父親と比べられる中井貴一、知りもしないおっさんに自分と似ていると勝手に自慢される中井貴一、気の毒である。

結局、中井貴一、好きなのだ。
でも他の芸能人はカッコいいだの、好きだの、演技がどーのだの騒ぐが、中井貴一に関しては妙に照れくさくてそれをしない。
でも誰かが褒めていると嬉しくて仕方がない。
まさかの"私の親族枠"に分類されている中井貴一。
洗脳って恐ろしい。


そんな中井貴一が今作の元になる立川志の輔の落語に感動して、企画・主演をしたというもの。


千葉県香取市役所
地元を盛り上げるために"大河ドラマの舞台に是非!"プロジェクトが立ち上がる。主人公は初めて日本地図を作ったことで有名な伊能忠敬。ところが調べていくうちに、伊能忠敬は地図完成の3年前に亡くなっていることが判明して...?


現代パートの市役所のメンバーと、回想パートの江戸時代のメンバーをそれぞれ出演者が一人二役で演じる。楽しい。
さすがご自身で企画しただけあって、中井貴一、自分に似合う役所をよくわかっているように思う。
真面目でお人好し、人に振り回される役を演じている時が個人的には好きなのだが、今回もそれだ。
あれ、前も市役所に勤めてたような...?と思い、それは『最後から二番目の恋』の鎌倉市役所の観光課だとなる。残念、今も勤めていたら『鎌倉殿の13人』で大忙しだったろうにと思う。
そもそも今作を観ようと思ったのは中井貴一だけではなく、『鎌倉殿の13人』が面白いので大河ドラマに興味を持ったというのもある。同じくハマっている友人と鎌倉散歩をして至る所で"鎌倉殿関連商品"を見つけ、大河ドラマの舞台になるって大きな経済効果なんだうなと思いながら鳩サブレの鎌倉殿とのコラボ缶を見つめた。
「買わないの?」
ウキウキとコラボ缶を抱きかかえる友人に答える。
「神奈川県民、鳩サブレ今更買わない」
もちろん美味しいのは知ってる。

松山ケンイチも大河ドラマ『平清盛』を演ってたなと調べてみたら、その際の平忠盛が中井貴一だった。松山ケンイチは影がある役の方が私は好きだが、インタビューやバラエティに出演されているのを観るとご本人はとってもというか底抜けに明るい方なのだろうなと思う。その明るさが反映されている役をコミカルに演じていて楽しい。中井貴一との掛け合いの息がぴったりなのも、大河ドラマで共演した経験で信頼関係はもう構築されていたのだろうな、となる。

ひょんなことから夢や目標が見つかることだってある。
何かを始めるのに年齢は関係ない。
そんなメッセージと共に江戸と現代をいったりきたりする。

伊能忠敬が完成させたとされる日本地図と現代の日本地図、多少のズレはあるものの、その完成度に驚いた。
そして私が何も見ずにフリーハンドで書いた日本地図と本来の日本地図の方が、父と中井貴一よりはまだ似ているだろうと思うので、夢は諦めない事が大切!という今作の訴えに頷きながらも、父の自分は中井貴一と似ているという夢は早く覚めさせようと思った次第。
むぅ

むぅ