八木

マッドゴッドの八木のレビュー・感想・評価

マッドゴッド(2021年製作の映画)
2.6
 セリフがないことで、理解の手がかりをすべて映像と自分の引き出しを開け続ける作業に求めることになりますが、目に飛び込んでくるものは製作者のやりたさが爆発して、キャッチーさに欠けた映像となっておりとても精神力を使います。よって、体調をちゃんと整えてなければ何も楽しくないまま終わる映画だと思います。
 暗い画面で、血や内臓を連想させる映像が、おそらく何か確信を持って連続的に映し出され、「どうも人間が存在する世界ではあるな」とか、「人のクローンぽいものも、同族の魔物っぽいものも、軽い命が存在するな」とか、全く不親切な作りというわけではありませんが、とにかく見る気が失せる画面のメリハリのなさは、普通に減点でいいんじゃないでしょうか。画面がカラフルになる瞬間も数回ありはしたのですが、じゃあそれが映画全体の救いになってたのかっていうと、そうも思いませんでした。
 僕は何の予備知識もなく見に行ったので、血や内臓が出てきたり、「嫌なもの見せレース」になっていくような方向を適当に作って、なんとか楽しんだつもりになれましたが、そういうカラーコーンの設置が間に合わなかった人にとっては、たとえ84分であったとしても、面白くない、楽しくないといった評価になっても止むをえないのではないでしょうか。

 しかし、おそらくですが、製作者はそういう「商業映画としての減点」を何も意識してないでしょうし、この点については、楽しめなかった人も楽しめた人も同意の取れるところのような気がします。自分にはこの映画が完成度を伴っているかが全然判断できませんし、どのように楽しめばよいのかはもう一度見ればまた全然変わる気がします。
 そして、もう一度見たいとは全然思わんです(半ギレ)。だったら減点だ減点。『それをストップモーションで?』『30年かけて?』『あの美術の巨匠が?』とか関係ねえっす。好きか嫌いかっていう話ですな。

 「ああどうも、この人はここに潜入した人であり、『人』ってことなんだな」という空気程度を感じられたあと、潜入先の地獄の日常風景で、とにかく嫌な感じの出来事をインフレさせていく中で、「赤ちゃんインゴッド」とかはとても楽しかったです。
八木

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