八木

ファンタジアの八木のレビュー・感想・評価

ファンタジア(1940年製作の映画)
4.0
 ウォルト・ディズニーによる「俺のクラシックベストアルバム+俺の考えた格好いい映像」120分という映画。どうやらミッキー出てるらしいね、というイメージだけで視聴したので、映画の構成自体がこんなに攻めたわけのわからないものだと思わなくて、冒頭にオーケストラが準備しはじめたところで困惑してしまいました。
 ウィキペディアによると、ステレオを導入した初期の作品であったり、ファンタジアという看板を据え置いて、曲だけを入れ替えてる形式のシリーズ映像作品にするといった構想もあったそうで、映画というものが「ある程度この範囲で暴れてオッケー」というコンセンサスが形成された現代にいたるまでのマイルストーンとして評価をするべきなんだと思います。
 アニメなどによく見られる、1-2分程度のOPテーマで、リズムの節目に文字やキャラクターがはめられて動くと気持ちいい、といった表現技法(ハルヒダンスみたいなやつ)は、このファンタジアという1940年の映画において挑戦され、ある程度完成されていると思います。ただその当時、今のようにポップスがリズムに向かって奇形化してなかったり、映像制作そのもののコストが違ったのみのように感じます。
 つまり、音楽を元ネタに映像を組み立てた作品をありがたがるなら、更に大きくミュージックビデオというものをありがたがるなら、ファンタジアの置いてある祭壇に向かって一礼などして、敬意を示してもいいんじゃないか、と言うふうに思うわけです。

 この映画自体は、クラシックや音楽に興味がなければ120分聞き続けて退屈な人も当然いるとは思います。しかし、ctrl+zが存在しない世界で、妖精が飛び回り、光の反射や火花を変態的枚数で表現し、ミッキーも拝めて、おまけに音源が右から左へパンしてくれて、クラシックの音ハメで気持ちよくさせてくれたレジェンド映画だというなら『ありがてえな』という感想が大半を占めてあと言葉を失うのでした。
 ところで僕は、原曲の構成やクラシックの演奏における標準がどんなもんなのか全くわかっていないのですが、例えば「魔法使いの弟子」におけるほうきを呼び寄せるシーンの休符の取り方とかは、アニメーションの演出のために変化させたりしたのでしょうか。それとも、楽譜のまんまで、そこにストーリーと映像を当てたのでしょうか。前者でも後者でも、すごいには違いないんですけど、その辺わかったら余計に面白くなれる気がしました。
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