八木

ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービーの八木のレビュー・感想・評価

4.5
楽しいだけで何もない映画でした。最高。
思えばマリオのストーリーであったり世界観というものは、現実だかファンタジーだかよくわかりませんでした。そしておそらくは、出足から今に至るまで、マリオの世界はすべて後付けされて拡張してきているはずなので、クッパはどうしてカメなのか、どうしてピーチをさらうのか、どうしてキノコ食ったら大きくなるのかなどを、映画の中で生クリームを塗るヘラのようになだらかにする作業を見せるだけで、楽しさを共有できてしまいます。よって話に何もなかろうがずっと楽しいのです。
どのような映画であっても、観客がそれを楽しむためのベースとなる知識は必要なものでして、マーベルやハリーポッター、ディズニーやコナン、スティーヴンキングや東野圭吾、歴史や埼玉あるあるだって、「知っていれば楽しい」になりやすいのは否めません。そして、別に罪でもありません。そういった意味で考えれば、マリオは1980sから2020sまで最新作を発売し続け、その多くが世界規模でヒットしていることを考えると、この映画の感想の集合体は、究極に上げ底されている映画なのかもしれません。
そして、究極に上げ底されて楽しめる映画が出てきたってこと、幸福でしかなかったのでした。知ってるタイトルの一場面、音楽、アイテム、キャラクターが出てきて「あ~」とニコニコする時間を作ってくれて、どうもありがとう。

もちろんそれだけじゃなくて、キャラクター設定に結構冒険色もあったの良かったです。マリオは独立したての事業主で、それについて回るルイージ(ヒロイン)にも見せ場あったし、ピーチという急に現れた王国要素は、異世界転生という設定で処理して、ボーイッシュな性格なのも愛せた。これはスマブラ要素もゆくゆく入ってくるでしょう。
あと何よりもクッパ。登場キャラクター全員基本的に可愛いのですが、乱暴者が恋に落ちてプロポーズの素振りしてるの可愛すぎませんかね。この「キャラクターがこの性格で動いてくれて嬉しい」って思えるのも良かったな。

あれだけのゲーム要素を90分少しにギュウギュウに詰め込んでも、まだ「あれが出てきてない」と僕程度の人間にも思えるくらい、ネタのストックが山程あるので、あらゆる原作付き映画のなかで全世代が楽しめる超強いコンテンツになり得ると思いました。
八木

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