Jaya

ジャミリャーのJayaのネタバレレビュー・内容・結末

ジャミリャー(1969年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

「兵士の妻」のジャミリャーの復員兵ダミヤルとの関係を弟セイトの目から描いたお話。物語が転回することになるダミヤルの歌、歌詞を訳して欲しかった。

ほぼモノクロのなかで、セイトの描いた絵が強い色彩で映し出され、しかもその絵たちがとても良い。誰が描いたのでしょう?節々で、絵が状況や心情を象徴的に描くとともに、現在でも過去でもない視点を美しく提供していたと思います。

美しい映像。夜の風景では極端に光量を絞り、昼との対比が素晴らしい。煌めいて見えたものはフィルムの具合なのか分かりませんが、味が出てました。

カメラワークも冴えていて、少ない人物を要所で丁寧に切り出すようなアップが魅力的。馬の撮り方がずば抜けていたように思います。口琴を多用した劇伴も素晴らしかったです。

印象的だったのは100kgを担ぐシーン。話の上では大きな転換点ではないですがここに焦点を当てたのが凄いと思いました。そして、それを強烈なインパクトの映像に仕上げる手腕。

ダミヤルに思いを寄せるに至るジャミリャーの心情が深く描かれている訳ではないのですが、それが逆に傍観者かつジャミリャーに密かに恋していたセイトの心情を強調しているようでした。

全体的にかなり文芸趣味ですが、雄大な自然を背景にして少年の微かに揺れ動く心を見事に描き出し、文芸を映画に昇華させることに成功している稀有な傑作でした。
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