Taka

RRRのTakaのレビュー・感想・評価

RRR(2022年製作の映画)
4.4
アクロバティック(acRobatic)・兄弟愛(bRother)・愛国心(patRiotism)…イギリス支配下のインドで相交える2人が拳合わせて権力に風穴を開ける様は週刊少年ジャンプもビックリの努力・友情・勝利。その無邪気さに我々が忘れかけていた映画の一面性を思い起こさせる一流エンターテインメントがそこにはあった。

「バーフバリ」シリーズのS・S・ラージャマウリ監督ということで気になって観に行ったが、「バーフバリ」シリーズ同様に権力者たちの悪しき力を力でブチのめす様はスカッとさせられる「水戸黄門」「半沢直樹」的快感は本作でも健在。日本人にウケるのも分からなくない。「バーフバリ」シリーズはどちらかというと古典、神話寄りだったのに対し、本作はイギリスに支配されていたという現代史をベースにしていることで現実味を帯びさせながら、物語は飛躍していくので個人的には本作のほうが話への没入感は大きかったと思う。

また、3時間という上映時間を飽きさせない要素の詰め込みも素晴らしい。冒頭、イギリス軍にビームの妹が攫われる様を描いたと思ったら、故郷への大義のためにイギリスの警察となったラーマの暴力を描く。そして、ビームと潜入捜査をしていたラーマは出会い、二人はやがてイギリス軍の館へと近づいていく…この時点で既に面白いがこれはまだ前半パートのお話。すげぇクライマックスが用意されてるな…と思ったら、「INTERRRVAL」と出て、まだ後半あるんかい!と思ったら、後半はラーマの過去と真相、大団円へと向かっていく。3時間の中にインド映画特有のミュージカル(ナートゥの一体感がまた良い…)とラージャマウリ監督特有のド派手なアクションと画に加えて、裏切りと友情で育まれるブロマンス、権力に風穴を開ける復讐ものを詰め込んでいるのでお話のピークが来たと思ったらさらに上を行くピークが次第にやってくるという飽きのなさ…2人の主人公を基軸にしている点も3時間を飽きさせない工夫に感じた。「レ・ミゼラブル」に香港映画の漢気を混ぜたと考えれば分かりやすいか?

と、このようにイギリスに虐げられていたインドという扱い方次第では大分シビアなテーマにおいて、暴力振るう権力に暴力でブチのめすという概略と上述した映画的体験で愛国(プロパガンダ)を薄めさせていることには成功している。個人的にこう書くのにはやはりあのテンションでエンドロールに突入して神々の名を歌詞にして感謝を述べるのは愛国だな…と思ったからだ。別に悪いわけではないのだが、冷静に一歩引くとそういう視点に立つ自分は確実にいるのだ。

しかし、それでもあの画と話で3時間を無邪気なまでに進めてしまう面白さはあるし、こうした映画的な面白さと無邪気な政治的危うさの両面において「トップガン マーヴェリック」を挙げるのは何ら不思議なことではないし、この2作が公開された2022年に改めて、その危うさを薄めてまでの映画的面白さはまだ通用するというか、その面白さを忘れかけそうになった2010年代を通ったからこそ改めて思うのだ。この面白さを忘却の彼方には置いていけない、と。

最後に。IMAXで鑑賞したのですが、インド映画とラージャマウリ監督作それぞれの魅力がIMAXに適応していたのはもちろんですが、全編IMAX画角だったのは良い。インド映画を観る機会もそうそうない上にここまでIMAXに適した映画もなかなかないので観れるうちに観たほうが良いですよ(やれるならBlu-rayとかにIMAX画角版入れて欲しいが)。
Taka

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