Taka

LAMB/ラムのTakaのレビュー・感想・評価

LAMB/ラム(2021年製作の映画)
3.9
子供のいない夫婦に突如として現れる禁断の果実。その果実に2人は縋りつくが…物語はやがて奇怪なホームドラマから自分たちと違うコミュニティと接触することの功罪を描いていく。

観ていて思い出したのは「竹取物語」である。内容は言うまでもないが、神話的アプローチを取った本作が偶然にもこの国においては「竹取物語」を彷彿とさせる展開へと向かっていく。もし、日本語吹替を作るならば、「まんが日本昔ばなし」みたいにして、夫婦の声優を市原悦子と常田富士男にしても全然成り立つレベルである。それくらいに話のベース自体は神話・民話を現代に落とし込み伝承できる。そういう意味で「TITANE/チタン」と相似している(なんなら使用されているとある楽曲が一致している点はさすがに観ながら笑った)。

また、異形コミュニティとの接触が物語を不穏な空気として包み込み、ラストに爆発する点もすごく現代的な映画である。あまり話すとネタバレになってしまうのだが、この要素も先日観た「NOPE/ノープ」を彷彿とする。終始不穏な空気を漂わせながら、動物たちの見上げるものを正体を明かさないまま展開し、ラストにはコミュニティの接触が引き起こした功罪へと結びつく…現代的というか、分断が叫ばれる現代らしいと考えるのは言いすぎだろうか?

物語の要素としてはすごく現代的でありながら、ベースとなるものは神話という点では映画としての噛み応えは良かった。ただ、雄大な自然を舞台としているために静かな場面も多く、前半は若干ウトウトしちゃう点はネックかな…と思った。途中で登場する叔父のペートゥルのような観客の代弁的存在がいなければ、106分は持たなかっただろうな…と(それこそ「世にも奇妙な物語」の一編に終始出来るほどのコンパクトになる)。

というわけでもし、観られるのであれば、「TITANE/チタン」→「LAMB/ラム」→「NOPE/ノープ」の順番で観ると互いの作品を補完し、現代的な社会背景が見えてくるかもしれないのでお勧めはします。
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