CureTochan

ダイ・ハードのCureTochanのレビュー・感想・評価

ダイ・ハード(1988年製作の映画)
4.8
この映画は主人公のセリフが最高だ。でも一番いけてるセリフは中盤(いや、1:38だから終盤か)、主人公を殺しそこねたテロリストがブチギレてるのを見て、嫁さんのボニーべデリアが同僚に言うあの一言。このセリフに嫁さんというものの本質がある。

そろそろ見せてもいいかと思って、子供と二人で、吹き替えで鑑賞。アマプラの吹き替えはまたも質が悪かった。あの無能な部長のセリフは「代わりのFBIが要るな」でいいのに、ヘボい翻訳が面白さをスポイルしているし、ときに滑舌が悪いのは最悪。どっちにせよ、アラン・リックマンの声が聞ける字幕で、もう一度子供には見せる予定である。彼は英国人で、「ドイツ人がアメリカ人のふりをしてる英語」を使いながら、あのスリリングなシーンを演じている。悪者なのに色気があり、見てて楽しい。ゲイリー・オールドマンやトミー・リー・ジョーンズ師匠と同じだ。

しかし今回わかったのは、子供には説明できない内容であった。マクレーンが6ヶ月もの間、嫁さんと離れていたせいで、とにかく溜まってるということ。

今は便利なもので、Die Hard scriptでググると脚本が見つかる(この映画の脚本家はコマンドーと同じ人だが、上記のFBIのオモシロ台詞はここには載ってなかった)。冒頭から、脚本に明記されている。スチュワーデスが巨大なぬいぐるみを見て笑顔で話しかけてくるのだが、彼女が魅力的なのでそのまま別れるのは忍びないマクレーン。つまり手を出す気まんまんということだ。たしかに可愛らしい女優が、主人公をじっと見ていた。空港の中で白いタイツの女から目が離せないとかもそうだ(これは西海岸らしいな、というネタでもあるが)。さらに監督が足した場面もある。パーティ会場で美女二人を見るところ。テロリストに隠れて、電話を探して上のフロアに上がり、それも断線していることがわかったあと、隣のビルの、セクシーな女の部屋を覗いてしまう。ここは脚本では、美女が電話をしていて、電話が使えないのはナカトミビルだけだということがわかるシーンなのだが、その点は分かりづらい。昔の電話は、エリア全体で不通になることがあったのだ。あとは、誰もが憶えている最上階の、ヌードポスターである。

このへんは、過剰な「男性性」を感じさせるとか批判されがちだが、現実にアメリカ人は週に1-2回は夫婦でファックしているのだから、半年もなかったら男女ともそれは溜まっているんである。そのことは、せっかく会えたのに喧嘩してしまう直前、ドアからやる気満々のカップルが乱入して来て二人が気まずくなる感じで、明示されている。照れ屋のジョンはそのせいで、逆に喧嘩を売ってしまったのだ。これはうまい。やはり女優が魅力的なことも大事で、終盤になんで胸がはだけているのかなどというツッコミは野暮である。

というわけで、パート2までは結局マクレーンがクリスマスイブにめちゃくちゃホーリーナイトする話なのである(2でも途中、空港の女と無駄に仲良くなっていた)。ただでさえ、アドレナリンが出たあとはそーいうことになりやすいものだ。サスペンス映画としてはパート2のほうが面白くて完成度が高いが、死人の数が多すぎて夫婦映画の部分とやや齟齬がある。そしてなるほどパート3からしんどくなるには理由があった。LAPDとFBIが無能すぎるとかもどうでもいいのだ。コロンボやリーサル・ウェポンは退職していたのだ多分。

嫁さんが旧姓で働いてる理由が、日本企業だから独身の方が有利だというのも面白いが、そのためにマクレーンと夫婦であることがバレにくいとか、社長から贈られた金時計が最後に落ちるといったディテールも素晴らしい。脚本ではマクレーンが外すんだけど、勝手に外れたようにも見える。彼はもう嫁さんの仕事を認めることにしたのだからと、監督がそうしたのかもしれない。社長室にある模型の美術もいい。

この映画は封切りのときは観ることができず、ビデオレンタルかなんかで観た。「こちらブルームーン探偵社」で、お喋りだけど頼りになる探偵をやってた若きウィリスを我々は知っていたから、そのまんまだと思ったものだ。アホの部長にアスホールと言われて思いっきり言い返すシーンは声に出して言いたい英語。運転手のアーガイルの反応も最高だ。

あと余談だがテーブルの下に追い詰められるシーンが、最近亡くなったヴァンヘイレンのHot for teacherのギターソロの映像に似ている。
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