CureTochan

ファーザーのCureTochanのレビュー・感想・評価

ファーザー(2020年製作の映画)
3.3
もともとは舞台演劇であったらしく、したがって米英の人たちはどういう話か知っていて観てるのだろう。その点は非常に不公平に感じた。だってお話は、トリッキーではあるが、そこまで面白くはないため、客を引っ張るのはもっぱらミステリとしての興味である。それが結局、ミステリ要素はごくわずかで、要するに認知症シミュレーションみたいな話だ。最後のシーンが、本当に描かれたとおりなのか、それともアンソニーの幻想なのか、あの✕✕は本当は〇〇ではないのか、主人公の顔をアレしたのは誰なのか、みたいなディスカッションがredditではされていた。でもそんなに興味ないし。音楽も全然ピンとこない。どういう話かわかっている映画ってのは、スコアが高くなりがちだ。もともと好きな人が見に行くから。

ホプキンス先生の芝居が絶賛されてるんだけど、こういう演技って、実はトム・クルーズにもできるタイプの非常時アクトである。「お達者バニラ・スカイ」と言っても良い。自然、私が期待したのも、もっと意外性のあるオチだった。

たしかにボケが進行した老人って、不安そうな顔をしている。今自分がどこにいるのか、さっきまで何をしていたか、わからないのは確かに不安だろう。しかし昔のことは憶えているもので、自分の職業がわからなくなるっていうのはかなり末期ではなかろうか。そして末期というのは、この映画のようにキレイなものではなく、なんならウンコ壁に塗りつけプレイの世界である。その手前でも、むしろ、かつての職場に行こうとして家族を困らせたりする。あとボケかけの年寄りは、環境を変えてはいけない。私の祖父も風邪をこじらせて入院したときに一気にボケて、自分がどこにいるのかわからずベッドから落ちたりした。帰宅するとかなり回復したが、同居のために転居したりすると、そのままボケるのではないか。自宅で目にするもの、家の中で動いたときに周囲にあるもの。それらのモデルが脳内にできていて、感覚入力との照合が常に起こる。そういうcueに囲まれて、洗面所に行く→歯ブラシを取る→歯磨きをする、というふうに、あまり意識しないで自動的に、意外と人は生きている。

あとボケた人間が言うことに、いちいちマジレスするなとも注意される。ハイハイと言って落ち着かせたほうがいいらしいので、この映画の家族は対応がいまいちである。イギリスといえば、専門医にかかるのに3ヶ月待ちなんて話が有名だが、今はどうか知らない。そういえば予約の電話は、あのあとどうなったのだろう?

とりあえず傑作「シックス・センス」の、ブルースウィリスの女神のような嫁さんの女優が、今でも綺麗でよかった。
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