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リトル・ダンサーのCureTochanのレビュー・感想・評価

リトル・ダンサー(2000年製作の映画)
4.0
とにかく主役の男の子の面構えが魅力的で、これをキャスティングし、いいショットを逃さず撮っていく監督の力量は随所に感じる。望遠レンズで海が見える道を踊りながら登っていくと、広角になって最後は行き止まりにつきあたる。これはニューカッスル近くのイージントンという場所で、Google Mapで調べるとどこで撮影したかわかるほど、小さい町だ。

だがドラマとしてのピークはこの子ではなく、父ちゃんに起こる。滅びゆく炭鉱でストライキをしても、老いた乳牛の乳をしぼるようなもので何も出ない。でも、こんなに貧乏で小さい町でもバレェを習えるってのはお国の文化の違いであろう。金がかかりすぎて気軽には続けられず、うちの長女もやめていた。

タイトルがビリー・エリオットという主人公の名前なんだけど、非常につまんないタイトルだという英語圏の意見を見た。スコティッシュ系の、とことん地元の男の名前というだけだ。「エリン・ブロコビッチ」ならまだわかると。結局、良いタイトルが思いつかなかった、あるいは「無題」にしたかった、という感じだろう。

かなり以前のことだが、「リトル・ダンサー」って昔、観に行って、良かったよね?と家内に訊いたら同意されたんだけど、あとで考えたら2001年だから家内と出会う前だった。たしかにミニシアターに出かけた相手は別の女だった。では家内は誰と観たのだろう?(^_^;)

それはともかく、当時はイギリス英語が耳慣れなくて、新鮮だったことは憶えている。danceの発音がデーンスではなく、文字通り「ダンス」。ダンスの何が楽しいのかも、よくわからなかった。欧米人の多い大きなパーティで、バンドがいたりすると自然とダンスタイムになり、なんなら年配の人から先に踊りだす。そういうシチュエーションをかなり経験し、年を取って恥じらいがなくなって、ようやく日本人もダンスを楽しめるぐらいだろう。ただし日本語の「ダンス」にはバレェは含まれないような気がする。

よく考えてあるな、というポイントは多い。友達の少年が、主人公に気があるのだが、主人公の性的嗜好は少々曖昧だ。ホモセクシュアルと女装の関係も私はよくわからない。自分が男なのに男が好きなのがホモなので、もし女装が性同一性の問題なら、男が好きなのはヘテロになるんではないのか。まぁそういうクイアーな友達がいることによって、主人公は性的嗜好とは関係なくバレェがやりたいのだということが示されている。ロイヤルバレェの面接において、帰り際にされた質問に答える彼の言葉がたいへん素朴で、テキストなどを学ばないで自分の中から出た言葉であることに価値があったのだとわかる。
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