CureTochan

7月4日に生まれてのCureTochanのレビュー・感想・評価

7月4日に生まれて(1989年製作の映画)
4.0
ロバート・パティンソン主演でリメイク希望。

帰宅の車中で、スルーしてきた戦争ものでも観てみるかと思ったが「プラトーン」が有料だったので、タダで観られる本作にした。子供の頃に観たオリバー・ストーンの作品たちは面白かったし、本作もめちゃくちゃ出来のいいドラマ映画だった。ただ、ノンフィクションだとは知らず、次に何が起こるのか無意味にドキドキさせられて疲れた。事実に即した話ってのは、物事の起こる順序に意味がなくランダムになりがちで、先が読みにくい。ノンフィクションだと知っている客に向けて作られていればなおさらだ。「ゾディアック」と同じで、これは実話です、と最初に表示してもらいたい。お願い。

戦争映画は確かに面白いが、いつも気になるのは、それは本当に戦争でなければ描けないことなのか?という点だ。たとえば元気だった若者が障害者になり、そのことを不条理と感じるといった例は、現実にはほとんどが交通事故である。腰から上は元気なのにびっこ引いてる人に、子供時代の事故がわりといる。交通事故をもっと映画化したほうが犠牲者も減らせるというものだ。

アメリカの有名な広告
https://youtu.be/gXvXmLmFOTE?si=slGPPCKsVk_NHrR6
この事故を起こした若者が彼女に会って、泣いている映像も有名だが、日本人はあまり知らない。

「ジョニーは戦場へ行った」だって、本質的にはすごく大きな怪我と安楽死の話であり、戦争はホラー要素というか、自分から進んで不幸に飛び込んだという前振りにすぎない。それでも反戦がテーマに見えれば、何でも文芸扱いされる。本作にしても、戦争って自分がケガしたからって反対していいものなのか?という問いは解決されない。もし無事に英雄になったらどうしたのか。

だが、本作は確かに文芸的ではあり、反戦だというとアカ=共産主義者呼ばわりされ、忌み嫌われるが、かつては自分もその多数派に与していたという話。「アイ・アム・レジェンド」の原作みたいだ。出てくる人に、さまざまな立場のアメリカ人が網羅されていて、さしずめ時代の要約になっている。

平時には共産主義者というかサヨクは、楽しくやってる大多数に水を差すのが好きなだけに見え、人を不快にするわけだが、戦争のときだけは、結果的に正しいことを主張することになる(とりわけベトナムのように、勝ち戦とは言えない場合)。彼らの存在意義が、戦争があることによってサポートされるのは皮肉である。もし差別も戦争もなくなったらどうする。合成洗剤反対に戻るのか。日本では、戦争に負けて、そらみたことかとサヨクが勢いづいた結果が歴史教科書とか朝日新聞てことになる。そして反戦映画がもてはやされる。

シリアスな芝居をがんばったトム・クルーズだが、やはり彼の売りはイケメンである。というか、インテンスな芝居しかできないクルーズの使い方を監督が、よくがんばった。特に、トム・クルーズには負け犬が似合うという発見をしたのが素晴らしい。「マイノリティ・リポート」でも私生活ボロボロの部分だけはよかった。トム自身にはそのセンスがなく、彼が制作側で力を持つようになると映画はつまんなくなった。

問題は、トムクルでは、戦争に行く前はあんなに良い子だったのに、、ってならないこと。テレビ番組に出た様子を見ればわかるように、もともとエキセントリックな人であり、普通の人の佇まいは出せない。この映画の前半も芝居からにじみ出てくるものがなく、セリフ以外の心の動きがわからない。女の子をプロムに誘うのに失敗し、バックヤードに戻る場面は役者として一番のがんばりどころなのに、ただブチギレるだけで魅力がない。プロムの夜に思い詰めてることが何なのかさえ、彼の行動を見て初めてわかる始末。話の後半で、田舎の社会や両親の言うことに従った結果が、この車椅子だ!みたいなことを言うんだけど、そういう展開なら子供時代の田舎パートや、あのキスシーンは、もっと楽しそうに演じないと困る。だから女の子と彼の関係も、どこまでのものなのかはっきりしない。そのあたり、ノンフィクションだから曖昧なのかな?という善意の解釈が可能で、高い評価につながったかもしれない。この前半、レスリングに負けるシーンをはじめ、本人よりも母親が怖くて面白い。やはり戦争映画はホラーだ。
CureTochan

CureTochan